43ある現在の部屋で、1990年代以前から今場所まで、常に関取を輩出している部屋は9つしかない。その1つの時代が終わろうとしている。西十両13枚目の翔天狼(33=藤島)が秋場所10日目に9敗目。幕下転落が決定的となった。

 部屋名こそ変わったが、藤島部屋は武蔵川部屋の流れを継ぐ。90年九州で初めて関取を出し、以来25年間、途切れたことがなかった。横綱武蔵丸や武双山、出島、雅山の3大関を生み、99年春からは6場所連続で、部屋の力士が優勝をさらった。03年秋には同時に7人もの幕内力士がいた。

 だが、関取は今、1人。2番手の武玄大(26)は幕下19枚目で、来場所での関取には届かない。翔天狼が最後のとりでだった。

 藤島より古くから関取が続く部屋は5つ。部屋創設の1878年から続く高砂、1935年5月からの春日野、58年九州からの佐渡ケ嶽、85年初からの片男波、90年秋からの時津風。

 翔天狼は「幕下に落ちるけど、来場所につなげたい。また、はい上がってくる」と悔しさに耐えた。伝統が途切れるのはさみしい。ただ、また新たな伝統をつくれるか。そこに問われる真価がある。【今村健人】