元横綱千代の富士の先代九重親方(本名・秋元貢)が亡くなって、もうすぐ1年になる。名古屋市東区にある九重部屋では今年、宿舎内の部屋の配置が換わった。先代が寝泊まりしていた部屋には、千代翔馬と千代の国の2人が移った。

 初日の朝、千代の国は不思議な気持ちで目覚めた。夢に、先代師匠が現れた。「師匠を夢で見たのは1年ぶりでした」。1年前に見たのは昨年7月27日。亡くなる4日前だった。改めて在りし日の姿が思い出された。「目が覚めると忘れてしまったんですが、すごく良い言葉を掛けてもらった気がする。どんな言葉だったか、思い出したいなぁ。みんな泣いていました」。

 宿舎には先代の衣装ケースや湯飲みなどが、変わらずにある。懐かしむ千代翔馬は、先代の通算1045勝が白鵬に並ばれた今、その偉大さを思った。「親方は、誰もいない中で1000勝を超えて、魁皇関や白鵬関の目標をつくった。130キロない体で押されないし、張り差しもしない。見ていて気持ちがいい」。

 初めて大関を倒し、今日10日目は白鵬と組まれた。千代の富士と似た体形に先代の魂は宿るか。「普通なら横綱と当たらない番付。何か縁がある。親方超えを1日でも延ばせるように頑張りたい」。【今村健人】