世界初挑戦のWBO世界ミニマム級1位山中竜也(22=真正)が、タイトル奪取に成功した。王者福原辰弥(28=本田フィットネス)をスピードで上回り、3-0判定で完勝。両親が離婚後、母理恵さん(46)に女手一つで育ててもらった。6人きょうだいの長男が、中卒たたき上げの両腕で輝くベルトをもぎ取った。ジムからは元3階級制覇王者の長谷川穂積氏、WBAスーパーバンタム級王者久保隼に続き世界の頂点に立った。

 安堵(あんど)と歓喜の笑みが、照れくささでゆがんだ。勝利の記念撮影。リングで山中を囲む輪に、母理恵さんが招き入れられた。「お母さん、絶対嫌がってたと思うんですけど…」。そう言いつつも、感謝と喜びは隠せなかった。

 6人きょうだいの長男は、いつも母、弟、妹を気に掛ける。両親が離婚した直後、堺市立八上(やかみ)小4年でボクシングを始めた。美原西中入学直後には理恵さんに「高校に行かんでええかな」と言った。1年後に真正ジム入門。中学を出ると神戸市内で自活に入った。時給850円のカツ丼店で稼いだ生活費は、母の日や誕生日前に日傘や服に変わった。

 リングでも実直だ。入門時から江藤日出典トレーナー(46)と二人三脚。敵地で戦ったこの日は王者福原をスピードで上回り、忠実な左、機を見てのコンビネーションでポイントを重ねた。徹底して狙われたボディーは「江藤さんに踏みつけられて、目をつぶって殴られてきたんで」と不安もなかった。

 江藤トレーナーは「本当に真面目でボクシングしかできない子」と誇らしげだ。9月3日には先輩・久保の初防衛戦が待つ。山中は「久保さんにつなげられて良かったです」。自分のことより、周りを思う笑みを浮かべた。【加藤裕一】

 ◆山中竜也(やまなか・りゅうや)1995年(平7)4月11日、堺市生まれ。漫画「はじめの一歩」の影響で八上(やかみ)小4年からボクシングを始め、美原西中2年で真正ジム入門。12年6月プロデビュー。昨年11月に東洋太平洋ミニマム級王座を獲得し1度防衛。好きな女性のタイプは篠田麻里子。身長165センチの右ボクサーファイター。