ロンドン五輪銅メダリストの清水聡(31=大橋)が初防衛を狙った王者ノ・サミュング(韓国)を5回1分54秒TKOで下し、初タイトルを獲得した。頭から突っ込む韓国スタイルに手を焼いたが、作戦変更した4回にダウンを奪い、5回もラッシュでレフェリーストップ。4戦目の東洋太平洋ベルト獲得は、WBO世界ライトフライ級王者田中恒成と並ぶ国内最速タイ記録で、4戦全勝4KOとした。

 3回終了後だった。清水にセコンドの大橋会長が声をかけた。「レパード玉熊戦法でいけ!」。90年代初頭にWBA世界フライ級ベルトを巻いた王者の名前を挙げたのは、バッティング気味に頭から突っ込む往年の韓国スタイルのノへの特効薬を思い出したから。時は90年7月、王者李烈雨に水戸で挑んだ玉熊の王座戦は、「頭」に対して細かい連打で10回TKO勝ち。その意図を理解した清水は、「切り替えて、力でねじ伏せられた」と、4回から戦い方を一気に変え、終わりなき連打で試合を決めた。

 「パンチより頭のほうがもらっていたかも」と、面食らった。3回に右ももらい、ペースに巻き込まれそうになった。作戦のアウトボクシングから変更を余儀なくされたが、相手土俵の接近戦でも圧倒してみせた。

 昨年末からプロゴルファーの松山英樹らを指導してきた早川トレーナーに師事。四つんばいになり、片脚を上げて階段200段を5往復などの過酷メニューで肉体改造してきた。連打、連打でも拳に伝わるパワー。「ねじ伏せ」て、その向上も実感。16年9月のデビュー戦から約1年でタイトル獲得し、来年は世界戦を見込む。技術の幅を示し「次は世界王者になります」と高らかに言った。【阿部健吾】