米プロレスWWEで、前ロウ女子王者アスカ(39)は大阪弁を響かせている。おばちゃん風な怒鳴り口調で、世界から集結するトップレスラーたちにプレッシャーをかける姿はすがすがしく、圧巻だ。英語も絶妙に織り交ぜつつ、大阪弁で世界中のプロレスファンを魅了する。第4回となる「WWEの世界」はアスカが、米マットで日本語を活用する理由を解説する。

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今のWWEにはアスカの発する大阪弁の勢いに対抗できる女子レスラーは、ほぼいない。リング上でマイクを握り、対戦相手と対峙(たいじ)すると、日本語でまくしたてる。年間最大の祭典レッスルマニア37大会に向けたロウ女子王座戦の調印式。リング上で挑戦者リア・リプリー(24)と向き合い、日本語と英語を交えて威嚇していた。

英語で王座獲得への自信を示したリプリーに対し、アスカは気合の入った表情でマイクを握ると、こう言い放った。「ちゃいまんねん、ちゃいまんねん。お前の自信は、本物とちゃいまんね~ん」と日本語で不敵に笑いながら挑発。間髪入れずに「Your confidence is borrowed not earned not yet.(あなたの実力は本物ではない)You have the talent,But you have to learn you are(才能はある。しかし、あなたは学ぶ必要がある)」とバッサリ。ナイトメア(悪夢)が愛称のリプリーさえも圧倒され、テーブルをひっくり返してアスカのマイクを止めるしかなかった。

アスカは「結構、英語だけの方が、本当は(言葉の)リズムが取りやすいんですよね」と苦笑する。英語と日本語のリズムとテンポを調整しながら、まくしたてるのは、相当なテクニックが必要だろう。それでも、あえて大阪弁を活用するのは「日本語を入れることで、より気持ちが高まるんですよ」と高揚感を大事にしている。何よりWWEファン、ビンス・マクマホン会長らWWE関係者の評判も非常に良いという。

アスカ みなさんが日本語を好むんですよ。プロデューサーも、ビンス会長も日本語、特に大阪弁が好きみたい。私がマイク(パフォーマンス)をやっているとビンス会長も喜んで笑っているのですよ。米国人、WWEユニバース(ファン)も大阪弁が好きみたい。

プロレスを始めた当時からアスカには大阪弁の「成功体験」がある。短大卒業後に大阪から上京。女子プロレス団体アルシオンに入門し、初めて道場のリングに立った時だった。

アスカ 最初は入団した当時、リングに上がらせてもらえなかったんです。初めて上がった時、ストンピングをやったときに(大阪弁で)『オリャー』ってやったら『すごい』って、みなさんが言ってくれまして。勢いがすごくて怖いと絶賛されました。

日米女子プロレスのスタイルは違うものの、アスカの大阪弁は万国共通の威圧感なのだろう。WWEに舞台が変わっても、ストロングポイントを貫くアスカの姿勢が、世界に受け入れられている。たとえ英語が分からなくても、アスカの言動だけみれば、日本のファンはWWEの世界観を堪能することができる。【藤中栄二】