IWGPタッグ選手権試合は、前王者で挑戦者のタイチ(41)、ザックセイバーJr.(33)組が、タンガ・ロア、タマ・トンガ組を破り、新王者に輝いた。

タイチは先月新型コロナウイルスに感染していたことを明かし、1カ月ぶりの復帰戦となった。勝利の瞬間、3カウントを奪ったパートナーに駆け寄って抱きついた。王者の強烈な連続攻撃を浴び「治ったといっても苦しかった」と、中盤以降は胸を押さえながら、険しい表情で戦い続けた。途中意識を失いかけ、あわや3カウントの場面が何度も訪れたが「気持ちだけだった」。最後は力を振り絞り、セイバーJr.をアシスト。天翔ザックドライバーからの3カウントにつなげた。

先週復帰できる状態ではあったが、セイバーJr.から「万全な状態で戻ってきて欲しい」と言われ、はやる気持ちを抑えた。「そのまま出ていたら、今日は倒れていたかも。ザックはいつも俺に優しい。本当にありがとうしかない」と1カ月間待ち続けてくれた相方に感謝した。

ベルトを巡って何度も戦ってきた因縁の相手だった。今年1月の東京ドーム大会でタイトルを奪われ、2月に挑戦するも敗れた。大切な形見だったアイアンフィンガーフロムヘルを奪われ、遺恨が勃発し、争奪戦にまで発展。5月3日にトンガとのラダーマッチを制して形見を取り戻して封印。1カ月後のこの日、2人からベルトも取り戻すことに成功した。

勝利の女神も現れた。タイチをリングサイドでサポートしていたディーヴァ(歌姫)のあべみほが477日ぶりに復帰。15年からリングサイドでサポートし続けていたが、コロナ禍により昨年から活動を自粛。久しぶりのリングで、入場から感極まり、祈りをささげるあべにタイチも力をもらい、最高のパフォーマンスで応えた。

因縁の相手に勝利したが、試合後には珍しく感謝の言葉を口にした。「俺がコロナで倒れていたこと知っていたんだろ。さっさと帰ってもいいのに、よく逃げないで日本で待っていたな。そんなツラして優しいんだな。ありがとう…とまではいかねえけど」。さらに「いつだって、また(防衛戦を)やってやってもいいよ」と再戦も受けて立つ意志を見せた。

復帰戦で王座奪還を果たし「ザック、いっぱい待たせてごめん。これから俺とザックで記録全部塗り替えていこう」と力強く再スタートを切った。十分な対策をしていたにもかかわらず、感染したことでコロナの怖さを実感した。「お前らもいつどこで俺みたいな目に遭うかわからねえぞ。手洗い、うがい、いっぱいしろよ。夜の街に飲みに行くんじゃねえぞ」。最後は自分に言い聞かせるかのように、集まったファンに訴えかけ、リングを後にした。【松熊洋介】