ボクシングWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(28=大橋)が、注目のリマッチで日本人初となる3団体統一王者を目指す。6月7日、さいたまスーパーアリーナでWBC世界同級王者ノニト・ドネア(39=フィリピン)との王座統一戦に臨むことが30日、発表された。19年11月以来、約2年7カ月ぶりの再戦となる。同日に都内で試合発表会見した井上はKO決着で返り討ちし、3本のベルト統一を狙う。

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ついに世界ベルト3本が懸かった井上の大舞台が決まった。19年11月、階級最強を決めるトーナメント、ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)バンタム級決勝以来となるドネアとの再戦。都内で会見した井上は「試合が決まった時、19年11月7日の決勝の日を鮮明に思い出しました。ドネアがWBC王者となり、ここ2KO(勝ち)と素晴らしい内容。モチベーションをかなりあげてくれる存在になった」と声をはずませた。

日本勢による世界ベルト統一は、井上を含めた王者4人の2団体が最高。20年4月、井上自らが1度、米ラスベガスでWBO世界同級王者ジョンリール・カシメロ(フィリピン)との3団体王座統一戦が組まれたものの、コロナ禍で流れていた。記録やベルトに興味よりも、強さを追求する井上は「統一より自分の中でドネアとの再戦が1番。ドネアをしっかり倒す。そこだけを考える」と返り討ちに集中し、初の3団体統一を成し遂げる姿勢だ。

19年11月の初対決時には井上が11回にダウンを奪って判定勝利を挙げた。その後、ドネアが2連続KO勝ちし、世界5階級制覇王者としての輝きを取り戻している。井上は「1度、決着はついていますが、必ず前回以上の内容で勝つことを約束します。13ラウンド目のつもりで覚悟を決めていく」とKO勝ちを意識する言葉を口にした。

前回のドネア戦は国内外で年間最高試合に選出されるなど「歴史的名勝負」(大橋秀行会長)として注目された。対戦交渉してきた大橋会長は「ドネアの覚悟を感じた。本当に油断ならない」と言えば、父真吾トレーナーも「経験と年齢による冷静さ。すごく怖いと思う」と分析した。

その周囲の警戒感を感じつつも、井上は「勝つのは自分だというところを見せたい。再戦は自分の方が有利。その理由は試合をみてもらえれば分かると思う」。ドネア撃破への確固たる自信を示した。【藤中栄二】

〇…WBC世界同級王者ドネアは独特な言葉選びで勝利への自信をみせた。この日のカード発表会見にインタビュー形式の動画で登場し「モンスター(井上の愛称)を狩りにいくだけ。モンスターを狩るにはワナを仕掛けて仕留める。モンスターを捕獲し倒すことができれば任務完了」と不敵な笑み。昨年5月にWBC王座を獲得し、同12月には初防衛にも成功。世界5階級制覇王者は「スピードとパワーが戻ってきた。かつての自分が戻ってきた」と手応えを示した。

◆日本ジム所属の世界王者による複数団体統一 過去に2団体統一王者が4人いる。12年6月、井岡一翔が八重樫東とのミニマム級王座統一戦を制し、初のWBA、WBC王者に。同級では高山勝成もWBO、IBFの両王座を獲得した。17年12月、WBA世界ライトフライ級王者田口良一がIBF世界同級王者ミラン・メリンドとの統一戦に勝利し、2団体王座を統一。WBA世界バンタム級王者井上尚弥は19年5月、IBF世界同級王者エマヌエル・ロドリゲスを下し2団体の王座をまとめた。なお4月9日にはWBA世界ミドル級スーパー王者村田諒太がIBF世界同級王者ゲンナジー・ゴロフキンとの2団体王座統一戦を控える。

◆前回の井上-ドネア戦VTR

19年11月7日、さいたまスーパーアリーナで行われたバンタム級の世界一を決めるWBSS決勝で対戦。当時、井上がWBA正規、IBF王者で、ドネアはWBAスーパー王者だった。2回にドネアの右フックで井上が右目上をカットして流血。右眼窩(がんか)底骨折で「二重に見える」視界となり、井上が苦戦する回もあったが、11回に左ボディーブローでダウンを奪い、3-0の判定勝利を収めた。IBFやWBA、米主要メディアなどが19年の年間最高試合に選出。