1日に79歳で亡くなったアントニオ猪木さんの愛弟子で、昨年、デビュー50周年を迎えた藤波辰爾(68)が猪木さんへ勝利をささげた。同日、神奈川・川崎市を拠点とするプロレス団体「ヒートアップ」の、とどろきアリーナ大会6人タッグマッチに出場。猪木さんの得意技だったコブラツイストで白星を挙げた。試合後には、号泣しながら師匠への思いを伝えた。

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勝利をささげた。藤波が紫のガウンを投げ捨てると、首には猪木さんのトレードマーク。赤いマフラータオルがあらわになった。6人タッグマッチで、最後にギブアップを奪った技は、猪木さんが得意としていた関節技「コブラツイスト」だった。勝利すると、天に向かって人さし指を突き上げた。

試合後のインタビュー。20秒間の沈黙の後で「本当につらいよね…」と話し出すと、ずっとこらえていた涙があふれ出した。

「猪木さんに『ばか野郎!』と言われる気がして、最後まで(涙を)抑えていましたけど…、負けてしまいました。すみません」。その後も、報道陣に背を向け、涙を拭い続けた。

最後に「ひと言では語れない。親よりも長く一緒にできた。幸せです。プロレスの全てが猪木さん。人生そのものでした」と、涙ながらに、ふり絞った。

偉大な背中を追いかけ続けてきた。付け人を務め、72年の新日本プロレス旗揚げに参加。昨年、自身のデビュー50周年を迎えた。現在もリングに立ち続けるのは、「燃える闘魂」に教わったプロレスへの思いが尽きないからだ。

最後に会ったのは約1カ月前だったという。妻とともに猪木さんを自宅に見舞った。「治療後だったけど、行けばやっぱりあの方のキャッチフレーズ『元気ですかー!』とね。あの時の状態の一番、精いっぱいの声で僕と家内を迎えてくれた」。弱いところを見せなかったという。

猪木イズムを継承し続ける。「猪木さんが大事にしてきたプロレスは、単なるプロレスじゃない。世間との闘い。それを大事にしていきたいですね。僕も、もうちょっと(闘って)いくつもりではいます」とあらためて、天に誓った。【勝部晃多】

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