“プロレスリングマスター”武藤敬司(60)が引退試合で華々しく散った。新日本プロレスの内藤哲也(40)のデスティーノを浴びて3カウントを奪われた。

試合後、かつて新日本プロレスを中継したテレビ朝日系列の『ワールドプロレスリング』で実況を務めたフリーアナウンサーの古舘伊知郎(68)が、会場で武藤引退のはなむけの言葉として以下の詩を朗読した。

 

「山梨県の富士吉田市に生まれし1人の男の子(おのこ)。入門から半年あまりで、あの月面の奥義を身に着けて、気が付けばアメリカマット界を席巻していた。いったいプロレスラブとは何なのか。

この男に二元論は通用しない。ストロングスタイルかアメリカンプロレスか。ベビーフェースかヒールか。はたまたプロレスか格闘技か。まったく通用しない。

思えば昭和、平成、令和。時代を移ろっても、技、試合のありさま。そして観客の声援スタイルが変わろうとも、一貫してこの男は二者択一を越えて、格闘芸術をつくってきた。

作品をつくるとき、必ず心は削られていく。両の膝に人工関節を埋め込んでたどってきたイバラ道。

じゃあ心は削られたのか。団体を渡り歩き、まばゆいスポットライトを浴びながら、常に、志し半ばで逝った橋本を思い、プロレスに殉職した三沢を抱き、昨年旅だった猪木を仰ぎ見ながら戦ってきた。もう限界なんかとっくに過ぎていた。

しかし、限界を超えてもなお輝き続けた夢物語。そろそろ今夜がお開きか。そう、これ昭和プロレスの終演なり。さあ、ザ・ファイナルカウントダウン。

武藤、この610文字に愛を込めて、今、積年の思いを込めて、さようなら。ムーンサルト」

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