大好きなおばあちゃんへ白星を届ける。K-1の元3階級制覇王者・武尊(31)が、24日開催の「Impact In Paris」(フランス・パリ)で復帰する。昨年6月に那須川天心に敗れて以来の実戦で、ISKA世界61キロ級王座決定戦(K-1ルール)に挑む。相手はISKA世界スーパーライト級(63・5キロ)王者のベイリー・サグデン(25=英国)。約1年ぶりに立つ必勝のリングを前に、昨年亡くなった祖母・道子さんへの思いを口にした。「努力は無限」。自分を奮い立たせてくれた言葉を胸に、笑顔で墓前に帰ってくる。【取材・構成=栗田尚樹】。
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42戦目で味わったプロ2敗目は、特別な感情を覚えた。武尊にとって、10年ぶりの敗北だったからではない。「最後に勝つ姿を見せられなかった」。昨年6月、那須川天心の前に判定負け。祖母・道子さんの最後の試合観戦となった。武尊は今年3月、インスタグラムを更新。「天国でゆっくり休んでね。大好きだよ」と最愛の人との別れをしのんだ。
いつも、隣におばあちゃんがいたから。
武尊 小さい時は、お父さんが単身赴任で、お母さんが仕事していたので、基本的におばあちゃんの家に預けられていて、おばあちゃんに育てられたような感じですね。親みたいな存在だし、親よりも優しいし(笑い)。おばあちゃん子でした。
父方の祖母は書道家。当初は、格闘技に反対していたが、すぐに毎試合、会場に応援に来てくれた。試合のパンツに入る「武尊」の文字は、道子さんがしたためたもの。デビュー戦から全試合に入る。いつも大好きなばあちゃんと、リングに立っていた。
あの日には、もう戻れない。一時は引退も考え、うつ、パニック障害も経験。無期限休養も発表した。ただ、止まらなかった。いや、止められなかった。
武尊 結局、あの1週間後から復帰に向けて動いていた。動いている時が幸せ。僕は体を休めることが休みにならない。何もしなければ気持ちが落ちてしまうタイプ。人と休む感覚が違う。
失意から約1年を経て、また祖母がデザインした「武尊」のパンツをはく決意をした。
武尊 次の試合は絶対に勝って、ベルトを持って、お墓に行きたいなと思います。
祖母がいたから、格闘技を続けてこられたと言っても過言ではない。
武尊 小学校の時に、おばあちゃんが書いてくれた言葉があって。『才能は限りがある。努力は無限』。この書は家にずっと飾ってある。僕は天才ではない。空手は小学校低学年から始めて、中学生までやっていたけど、優勝は1回もない。ほぼ1回戦負け。運動テストも平均。足もそんなに速くないし、でも、そういう人間でも努力すれば世界チャンピオンになれる。そういうのは、おばあちゃんにもらった言葉を信じて頑張っていたのはあるかな。
地元の鳥取・米子に帰れば、毎日のように祖母の元を訪れていた。デートに出かける日もあった。旅行も何度も行った。ただ、後悔がある。
武尊 おばあちゃん孝行出来ていなかった。逆にしてもらってばかりで。チャンピオンになってしてあげたかった。
鬼気迫る表情で続けた。「自分自身が負けたままで終わることが嫌なので」。最愛の人は、大好きな孫の笑顔を待っている。無限の努力で有言実行し、報告に戻ってくる。お墓の前で、ほほえみながら「大好きなおばあちゃん、勝ったよ」って。
■THE MATCH 2022(那須川天心-武尊)VTR
22年6月19日に東京ドームで開催。所属やスポンサー問題の壁に阻まれ、那須川による15年11月の直訴から約7年を経て実現。キック界の両雄の対戦は「世紀の一戦」とされた。契約体重58キロで3分3回。1回は天心が残り10秒に左フックでダウンを奪取。2回はバッティングや武尊が天心を投げて注意が与えられる場面があった。3回は一進一退の攻防で、結果は那須川の5-0の判定勝ち。会場には観衆5万6339人がつめかけた。
■武尊の1年
22年6月19日 世紀の一戦と呼ばれた那須川天心戦で、10年ぶりの敗北。「引退を考えた」。ただ「ファンの声が支えだった」「負けたまま終われない」と現役続行を決意した。
同27日 会見を開き、無期限休養を発表。心身がボロボロで、腰の分離すべり症や膝の内側靱帯(じんたい)、前十字靱帯の損傷、パニック障害、うつ病だったことも公表。
同8月4日 右拳の手術が成功したことを発表。
同8月19日 右膝の古傷の手術成功を発表。
23年3月29日 ABEMA専属のペイパー・ビュー(PPV)ファイター契約の締結、ABEMAと1試合最低報酬1億円が発表された。パリでサグデン相手に復帰も明らかに。
同30日 自身のインスタグラムで、最愛の祖母が亡くなったことを発表。
同5月9日 アジアを拠点とする格闘技興行ONEチャンピオンシップに参戦することが決まり、会見で「世界の武尊になれるように戦っていく」。
■武尊「失うものもない」パリへ出発
○…武尊はこの日早朝、成田空港からパリへ飛び立った。搭乗前に囲み取材に対応。「本当に(那須川天心戦で)負けてやめるつもりだった。言い方悪いですけど、一回死んだ命なので。いい意味で失うものもない。思いっきり全力で格闘技を楽しんでいきたい」と意気込みを口にした。左袖に日の丸をあしらった白いジャージー姿で出発。「日本代表です」とアウェーの地から勝利を届ける。
■ABEMAが独占生中継
○…今大会はABEMAが独占生中継する。武尊の試合は24日の日本時間の午後10時30分~午後11時を予定しているという。また日本からは、元K-1スーパーフェザー級王者の大雅、第5代RISEライト級王者の白鳥大珠も参戦。大雅はFFKFDA63キロ以下級のフランス王者のウマハメド・ファレス、白鳥はWAKO欧州王者のアレクシス・ソートロンと対戦する。

