無敗の格闘家でWBOアジア・パシフィック・バンタム級王者の那須川天心(26=帝拳)が転向6戦目で前世界王者を撃破した。前WBO世界同級王者ジェーソン・モロニー(34=オーストラリア)との119ポンド(約53・9キロ)契約体重10回戦に臨み、3-0の判定勝利。尻もち寸前まで効かされた危機、鼻血、両目下にあざができる打ち合いを制し、トップ級に成長したことを証明した。今秋以降に控える世界挑戦へ、大きなはずみをつける貴重な勝利となった。
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判定勝利した那須川の両目下は内出血であざになっていた。それは接近戦を好むモロニーの打ち合いにも応じた証だった。1回に右ショートパンチを効かされ、6回に右ストレートで尻もち寸前のピンチに陥った。7回に鼻血を出しながら強烈な右アッパーで相手顔をはね上げ、左でボディー、ストレートを的確にねじ込んで競り勝った。前世界王者との激戦を乗り越えた。
「モロニー選手、予想通りにめちゃくちゃ強くて。初めて効かされた感じ。ああ、これかと。良い経験をさせてもらった。初めて打ち合いをして。打たれ強いと思った。ちょっと一人前、男になれたなと」
ボクシング転向後、MLBドジャース山本由伸投手が採用するBCトレーニングを開始した。試合後のジムワーク再開前、大阪に足を運び、山本を指導する矢田修トレーナーのもとで1週間ほど短期合宿。故障予防や調整、運動能力向上を目的とした呼吸、バランス運動を学ぶ。那須川は「呼吸や自分の体の位置が分かる。ここが詰まっているとか、動き悪いなとか。呼吸しながら動かしながらやっている」と効果を強調。その地道な作業でダウン寸前でも踏ん張ることができる肉体をつくりあげている。
モロニー戦後、試合視察していた同じキック出身のWBO世界バンタム級王者武居由樹(大橋)とリング上で握手を交わした。「武居選手といろんな因縁というか。アマ(キック)で試合して。僕も世界王者になって、いつかどこかで必ず戦いましょう」とエール交換。今夏前に世界前哨戦の7戦目、今秋の8戦目以降に世界戦に挑む見通しだ。
「世界でやれる感覚はある。過信しすぎることなく、可能性あると。試合中、こんなに楽しくなることない。よっしゃやるぞ、と」
25年初戦で「対世界」を十分、感じさせた。【藤中栄二】
◆那須川の世界ロード 25年は世界王者への道「3年計画」のラストイヤーだ。23年4月、日本ランカーだった与那覇勇気(真正)とのデビュー戦で6回判定勝利。24年7月のジョナサン・ロドリゲス(米国)との世界ランカー対決で3回TKO勝ち。24年10月にはWBOアジア・パシフィック・バンタム級王座を獲得し、日本プロボクシング協会の内規をクリア。日本での世界王座挑戦権を得た。今夏前に7戦目を控え、今秋以降となる8~10戦目で世界挑戦する見通し。なお同じキック出身の武居由樹(大橋)はプロ9戦目で世界王座を獲得した。
◆キック出身の主なボクシング世界王者 スーパーライト級王者としてムエタイ無敵を誇ったセンサク(タイ)は75年7月、転向3戦目でWBCスーパーライト級王者フェルナンデス(スペイン)に8回KO勝ちして世界王者に。3戦目での世界王座奪取は今も最短記録。ムエタイ3階級制覇ウィラポン(タイ)は95年9月に転向4戦目でダオルン(タイ)に判定勝ちしてWBCバンタム級王座を獲得。元WBO、WBC世界ヘビー級王者ビタリ・クリチコ(ウクライナ)もキックからの転向組。転向後、世界選手権スーパーヘビー級銀、プロでも世界一に。24年5月、元K-1スーパーバンタム級王者武居由樹(大橋)がWBOバンタム級王座を獲得し、日本人初のK-1とボクシングの世界王者となった。
◆那須川天心(なすかわ・てんしん)1998年(平10)8月18日、千葉・松戸市生まれ。5歳で空手を始め、小学5年でジュニア世界大会優勝し、キックに転向。14年7月、15歳でプロデビュー。15年5月に16歳でRISEバンタム級王座を獲得。16年からRIZINなどに参戦。18年6月に階級を上げ、初代RISE世界フェザー級王者に。22年6月、K-1の元3階級制覇王者・武尊を判定で下した。23年4月に6回判定勝ちでボクシングデビュー。24年10月、WBOアジア・パシフィック・バンタム級王座獲得。家族は両親、妹2人、弟。身長165センチの左ボクサーファイター。

