新十両の宇良(23=木瀬)は、異色の相撲を取る。173センチ、127キロの体で低く構え、時には一気に押し、時には足を取って揺さぶる。超個性派の新星は、いかに成長してきたのか。連載「低空の魔術師 新十両宇良」で、秘密に迫る。第1回は「居反りの原点」。

 居反りとは、相手を担いで背中に乗せ、後ろに反って倒す大技。プロ入り後は1度も出していないが、学生時代に決めたことで、宇良の名が世間に広まった。

 奇手を育んだ原点は、地元大阪・寝屋川市のエンジョイ・レスリングクラブにある。相撲は4歳から始めたが、体格差がつく小3ごろに勝てなくなり「階級別で勝つ喜びを教えてあげたい」と願う母信子さんに勧められ、小4から週3回本格的に通い出した。

 練習場は15メートル四方のマットの上。そこで頭をつけたままの前転や、ブリッジ、三点倒立、バック転に側転もした。相撲の申し合い稽古のように、相手と何度も組み合った。そして“がぶりの練習”を繰り返した。

 「タックルに失敗したら、相手に覆いかぶされる。がぶられる、と言うんですが、そうなると我慢しかない。宇良もよく耐えていた」と、同クラブの東嗣朗代表(63)は振り返る。低い姿勢で耐えることで腰が強くなり、隙を見て仕掛けたのが飛行機投げだ。担ぎ上げて左肩方向に落とす技で、居反りの原型になった。

 相撲とともに、レスリングは中3まで続け、1度全国2位になった。「鼻血や突き指は、しょっちゅうでした」と東代表。80分で休憩は2分だけ。厳しい練習で培った根性と体力も今に生きている。【木村有三】

 ◆宇良和輝(うら・かずき)1992年(平4)6月22日、大阪府寝屋川市生まれ。4歳でわんぱく相撲に参加。京都・鳥羽高から関学大に進学。13年にロシアで開催された武術と格闘技の世界大会の相撲(85キロ未満の部)で優勝。14年全国学生個人体重別選手権無差別級3位。15年春場所初土俵。同夏場所序ノ口優勝。