今年の初場所、春場所に続き再び「一人横綱」の重責を背負うことになった横綱鶴竜(32=井筒)が、悪癖の引きで墓穴を掘ってまさかの連敗。かつて自分の付け人を務めていた東前頭3枚目の阿炎(24=錣山)に金星を配給してしまった。協会幹部も本人の心中を察するように戦況を分析した。

 八角理事長(55=元横綱北勝海)は「(引きを)やってはいけないということは、本人がいちばん分かっているだろう」と鶴竜の胸中を察するように話した。前日の勢戦と同じ引いて墓穴を掘ったが「昨日の負けの影響が出たのか? 勝ちたい気持ちが強すぎたな」と分析。「相手がもろ手で来ることも、その後の攻めも分かっているはず。相手が引くぐらいに、ずっと突っ張らせておけば良かったのに、その余裕がなかった」と前日の負けが尾を引いていたと推察した。

 正面土俵下で審判長を務めた審判部の藤島副部長(元大関武双山)は、鶴竜の攻めが「(阿炎には)土俵際で突き落としとかがあるからか、ちゅうちょしながら出ていた。思っていたより攻めきれなかった」と中途半端だったと指摘。「最後は悪い癖が出ました」とし、その鶴竜の引きは「鶴竜の攻めをしのげば引いてくる、というのは全力士の頭にあるでしょう」と、今や共通認識の弱点とした。ただ、優勝争いについては「栃ノ心が軸になるでしょうが、まだ10日ある。2横綱が休場しているし、鶴竜にもまだチャンスはあると思います」と、立て直しに期待した。