東幕下筆頭の彩(いろどり、27=錣山)が、勝ち越しを決め、来場所の新十両昇進を決定的にした。

東十両14枚目の大成道の突き、押しに押し込まれながらも、タイミング良くはたき込んだ。今場所は黒星発進だったが、その後は4連勝で4勝1敗とした。

07年春場所の初土俵から12年での新十両を決定づける白星に、取組後には涙を流した。「4回目の十両の土俵で、これまでは緊張して3回失敗してきた。今日は勝ち負けを気にせず、思い切りいこうと思っていた。必死だった」と、大銀杏(おおいちょう)を結って臨んだ大一番を振り返った。師匠の錣山親方(元関脇寺尾)には「余計なことを考えず、思い切り好きなことをやってこい」と背中を押され、無我夢中で取り切った。

最近1年間は、7戦全勝なら十両に優先的に昇進する幕下15枚目以内にいたが、あと1歩足りないケースが続いていた。「いつも緊張してしまっていた。今場所は、今までの相撲人生で一番緊張した。でも(今場所で)絶対に決めようと思っていた。自分はプレッシャーに強いんだ、と言い聞かせてきた」。極度のあがり症は、稽古で解消するしかないと、全体の稽古前に四股、すり足、てっぽうなどの基礎運動、筋力トレーニングを繰り返してきた。この日の一番では、自然と相手の突きに下からおっつけるなど、稽古の積み重ねで自然と体が動いて白星をつかんだ格好だ。

しこ名の彩は、出身の埼玉県の愛称「彩の国」に由来する。同部屋で同郷の前頭阿炎は、小学生時代から同じ相撲道場に通っていた後輩。彩は「あいつが」と言った後に訂正し、敬意を表しながら「阿炎関がいなかったら、とっくにあきらめていたと思う。同郷の幼なじみ。小さいころから弟のような存在。先に(阿炎が)出世したのを見て『絶対に自分も関取にならないと』と思った。長かったです」と、かみしめた。

現在、体重は145キロだが「今の相撲だと155キロぐらいに増やさないと、上では通用しない。いっぱい食べて、トレーニングして増やしたい」と力を込める。来場所、毎日十両土俵に立つ自分を思い描きながら、目を輝かせていた。