西前頭8枚目の朝乃山(25=高砂)が、幕内で令和最初の勝ち越しを決めた。ここ一番で繰り出す、頭からぶつかる鋭い立ち合いで先手を奪い、竜電を寄り倒し。取組前まで5連敗、幕内では通算1勝5敗だった苦手を破った。

1敗は横綱鶴竜、関脇栃ノ心と並ぶトップタイだが、先に取組を終え「令和初」となった。

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今場所初めて頭からぶつかった立ち合いが、気合の表れだった。朝乃山の圧力は、苦手の竜電を後退させた。慌てて押し返してきた相手をタイミング良くいなし、最後は右を差す得意の形から寄り倒し。令和最初の本場所で、幕内力士で最も早く勝ち越しを決めた。「自分の中ではまだ平和、じゃないや、平成のつもりでいた」と、新旧の元号が混ざり、闘争心とはほど遠い熟語が飛び出したのはご愛嬌(あいきょう)。続けて「1番に勝ち越しといっても何とも。まずはあと2番勝ちたい」と、2ケタ白星へ目標を上方修正した。

胸から当たる立ち合いが多いが「強い相手とやる時は頭から」と明かした。竜電は5連敗中と苦手だっただけに、富山商高時代「ここ一番で」と教わった立ち合いを、決心して場所入りした。勝ち越し王手から終盤戦5連敗で負け越した先場所の苦い経験から「一発で決めたかった」。

5日目には竜電同様、1勝5敗と苦手の輝も破った。師匠の高砂親方(元大関朝潮)は「苦手を克服したあたりに今場所の進化がある」と認めた。6月に初めて故郷富山県で部屋の合宿が行われるが「敢闘賞は欲しいですね」とニヤリ。三賞、さらには優勝を手に帰郷-。夢が近づきつつある。【高田文太】