現役最年長関取で西十両8枚目の豊ノ島(36=時津風)が“危険水域”を脱する5勝目を3連勝で飾った。

1勝5敗と元気のない東十両6枚目の貴源治(22=千賀ノ浦)と対戦。得意の二本差しは立ち合いで相手の圧力を受け後退。引いて貴源治を呼び込む形となったが、これが不幸中の幸い。上体を高くして出る相手に対し、二本がスパッと入った。この時、右足は俵にかかりかけたが、落ち着いて寄り戻す。一呼吸置いて、腰を振りながら肩越しに取られた相手の右上手を切りながら、万全の体勢で寄り切った。

二本差しのうまさはベテランならでは。「ちょっと呼び込んだけど、二本入った後は万全だった。もろに引いてしまったけど(相手を)グラグラと崩したタイミングで二本入った。あとは体を入れ替えてね。慌てないで、しっかり(相手の上手を)切れる形になって十分に体を寄せた。良かったんじゃないかな」と、まるでVTRを見ているかのように、取り口をスラスラと振り返った。

危機的状況で迎えた今場所。右足を痛め先場所は途中休場し十両陥落。番付を大幅に落とし、十両も下に6枚を残すだけ。仮に今場所、4勝11敗なら単純計算で幕下まで落ちる。何とか関取に踏みとどまれる5勝でさえ、満足に稽古できなかった場所前のことを考えれば不安視され、場所前には「九州場所はオレにとって、いろいろとターニングポイントになっている。やめるとすれば、この九州かもしれない。今年じゃないにしてもね」と禁断の「引退」の2文字が頭をかすめても、おかしくない状況だった。それだけに「こんなに早く最低目標の5番、勝てるとは思わなかった」と、安堵(あんど)の表情で本音を漏らした。

場所前半のうちに「最悪条件」の目標達成を果たし、こうなれば勝ち越しはもちろん、再入幕に近づくためにも星を上乗せしたい。さらにこの日、全勝が消えたため幕内同様、混戦模様の十両でも優勝争いに参戦できる。「これで令和2年も関取として迎えられる。でも気が抜けるのが一番、危ない。もう1つ、気持ちを入れ替えて(翌8日目を)初日のつもりで緩めずに行きたい」。験のいい九州場所、めっぽう強い十両の土俵は、今年も豊ノ島に味方しているようだ。