今年6場所すべて幕内に在籍した力士の中で、1番あたりの平均時間が最も長い「相撲を楽しんだで賞」は、白鵬(34=宮城野)だった。不戦勝、不戦敗を除いた出場57番の平均は13・8秒。2位逸ノ城より0・6秒長かった。07年秋場所では、わずか平均4・93秒で横綱昇進後初、通算4度目の優勝を飾っている第一人者は「それは面白いデータだね」と、目を見開いた。

「隠岐の海、御嶽海…。もろ差しを許すことが多くなった。脇が甘くなったということかな」と、苦戦の多さが要因と分析する。それでも包丁を扱う人に例え「包丁を素人は1週間でダメにする。少し上手な人は1カ月。でも達人は自然とさばくから、いつまでも刃こぼれしない」と説明。力任せに取組相手を料理するのではなく、時には相手の力を利用する。取組時間は長くても、実は自身に負荷をかけず料理できる現在こそ、技術の粋と自任する。

また平均では白鵬よりも1・5秒短いが、年間の取組時間が最も長い「土俵に長くいたで賞」は竜電(29=高田川)だった。皆勤で不戦勝もなく、90番の総取組時間は1102・9秒。「長い相撲になったら拍手が起きるような力士になりたい」。じっくり攻めてスタミナ勝ちこそ真骨頂だ。2人に共通したのは「取組時間の長さ=誇り」ということだった。【高田文太】

(おわり)