大相撲初場所で、幕尻の徳勝龍(33=木瀬)が初優勝を果たした。

徳勝龍には特徴的な動きがある。土俵際で相手を突き落とした際、両手を万歳し、片足立ちになって残る。どこかユーモラスなこの場面は、早くから相撲ファンの「ネタ」にされてきた。ツイッターでは5年前、このポーズをコラージュした画像があふれ「#徳勝龍クソコラグランプリ」というハッシュタグまでできた。

突き落としは「相手の肩や脇腹に手を当てて突き落とす」という技。今場所特に、徳勝龍の武器になった。8日目に加え、10日目から5日連続で決まり手は「突き落とし」。右からも左からも突き落とせる動きの良さがある。あの「万歳ポーズ」は8日目に飛び出した。

木瀬部屋の部屋付き親方である稲川親方(元小結普天王)は、徳勝龍の相撲について「左四つの型を持っているのと、小技がうまい。あとは、突き落としの感覚を持っている」と言う。徳勝龍の突き落としについては「独特で真似できない。圧力が加わっているから初めて効く。墓穴を掘ることもある」と指摘する。

基本的には押し相撲だが、突き落としなどの技があり、故北の湖親方(元横綱)に気付かされた左四つでも相撲が取れる。

この左四つも、今場所では随所に見られた。優勝を決めた千秋楽の貴景勝戦は、左四つになったことが勝因だ。これについても、同じ左四つを得意とした稲川親方は「同じ左四つでも、寄り方のポイントが自分とは違う。徳勝龍は(相手の差し手を)抱えて、胸を合わせて寄る。自分はそれはやったことがない」と説明する。徳勝龍の左四つは、一般的には相手に力を伝えにくいとされるが、本人はこれでいい。「それはそれでいいから、こういう寄り方もあるよと伝えたことはあります。バリエーションはいくつか持っている方がいいですから」と稲川親方。

特徴はルックスだけではない。相撲の個性を生かして、徳勝龍は優勝をつかみとった。【佐々木一郎】