「栄光への架け橋だ」などのオリンピック(五輪)実況や大相撲中継で知られるNHKの刈屋富士雄アナウンサー(60)が30日で定年退職し、5月1日付で立飛ホールディングス執行役員スポーツプロデューサーに転身する。最後の荷物整理をしていた29日、現在の心境や今後の仕事などについて聞いた。「後編」は、今後の仕事について。【聞き手=佐々木一郎】

-新たな職場でやりたいことは何ですか

「相撲の底辺拡大のために、日本で毎年、東京でアマチュアの国際大会を開きたい。それをやってみたいんです。これができれば、ほかのスポーツにも波及するのではないかと思っています。ボートもオリンピックのために海の森水上競技場ができました。ここを生かしたボート文化をつくっていく。これがやりたい2つの柱になります」

-立飛ホールディングスで執行役員スポーツプロデューサーになると聞きましたが

「3年がかりでどこがいいか探してきました。立飛ホールディングスを見ると、土地があるし、やる気があって実行力がある。社長がやろうと言ったら、すぐやろうとなる。夢を実現するにはここしかないと。アマチュアの国際大会をやるなら、ここしかないと3年かけてリサーチしました。アマチュア相撲の関係者にも話を聞きました。それで村山社長に話をもっていきました。世界と日本全国を結び付ける接点にしたい。新しいスポーツ文化の『架け橋』ですよね」

-立飛ホールディングスがかかわっているスポーツイベントはどんなものがありますか

「テニスの大坂なおみ選手が全米オープンで優勝した後、凱旋試合となった東レ・パンパシフィックオープンの会場がアリーナ立川立飛でした。ここは、B1リーグのアルバルク東京がホームゲームをやることもあります。ホッケー女子日本代表のスポンサーにもなっています。大相撲の立川巡業も勧進元としてやりました。数年前、初めて社長にお会いしたのも巡業の時です。砂場もあり、ビーチバレーやビーチサッカーの公式戦もやります。オリンピックの事前キャンプ地として、北中米の国など約30カ国を受け入れます。これらの中核に、アマチュア相撲の国際大会を持っていきたいのです」

-大会は新設ですか

「新設です。すでにある世界選手権は各国が持ち回り。これとは別の国際大会を毎年、アリーナ立川立飛でやります。世界選手権と差別化を図るため、男女混合のチームで団体戦をやります。新型コロナウイルスの影響が心配ですが、8月16日にすでに予定しています。国内12チームに加え、海外からも招待します。(元大関の)把瑠都や、(元横綱の)日馬富士にも声をかけています。まずはデモ大会として実施し、何年かやって軌道に乗れば国内予選も実施します。1チーム5人で、そのうち2人は女性、1人は中学生。男女とも軽量級と無差別級とします。大会名はまだ仮称ですが『ワールド・トロフィー』の予定です」

-新型コロナウイルスの影響は心配ではありませんか

「中止の可能性はあります。7月くらいまで粘って、できるかどうか見極めます」

-ほかにやりたいことはありますか

「ウインタースポーツの財団も立ち上げたい。スポンサーがなくて苦労している人もいる。例えばフィギュアスケートのペアやアイスダンスも支えたい。ほかにはスポーツ選手のセカンドキャリアをマネジメントする会社、彼らの生計を立てていくためのイベント会社など。妄想だけは大きいんです。でも、妄想もいろいろ話していけば構想になります」

-NHKは65歳まで延長して在籍できると聞きましたが

「65歳になってから挑戦したのではやる気がなくなっているかもしれない。夢にかけてみようと思いました」

◆刈屋富士雄(かりや・ふじお)1960年(昭35)4月3日、静岡県御殿場市生まれ。早大時代は漕艇部所属。83年にNHKに入局し福井、千葉放送局をへて92年から東京アナウンス室。五輪は92年バルセロナから10年バンクーバーまで8大会で現地から実況した。