今年3度目の幕尻優勝もあるぞ。東前頭17枚目の志摩ノ海(31=木瀬)が千代の国を寄り切り、1敗を守った。今年初場所で幕尻優勝を飾った同部屋の徳勝龍と同じ明徳義塾-近大の経歴。アマで実績を積んだ実力者ながら、大けがで出世が遅れた苦労人でもある。2横綱2大関休場で大混戦の今場所、幕内最下位からの下克上を狙う。1敗は大関貴景勝と2人となった。

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またも幕尻が脚光を浴びる。幕内残留に後がなかった志摩ノ海が、堂々の優勝争いだ。「昨日、師匠(木瀬親方=元幕内肥後ノ海)が『相手は突っ張ってくるから頭を上げるな』と言ってくれた。それだけを頭に刻んでいった」。師匠の助言通り、低い前傾姿勢で千代の国を寄り切った。

今年初場所。まったくのノーマークで初優勝を遂げた徳勝龍と重なる。幕尻、同部屋、さらに明徳義塾高から近大をへての角界入りの経歴も同じ。1敗を守ったが「何も考えていない。考えたらダメなんで。師匠からも『無心になっていけ』と言われている」。

エリート街道から転げ落ちた経験が今に生きる。付け出しの資格は得られず、前相撲からのスタートも順調に番付を上げて13年名古屋場所は関取目前の西幕下4枚目。しかし、この場所で左膝前十字靱帯(じんたい)断裂の大けがを負った。復帰した翌14年名古屋場所は東序ノ口18枚目。関取に手をかけながら振り出しに戻された。そこから愚直に努力を重ね、幕内力士の地位を築いた。

この日、兄弟子の元小結臥牙丸の引退が発表された。「入門当初、小結にいた。はるか上の人に稽古をつけていただいた。感謝の気持ちと寂しい気持ちでいっぱい。指導してもらったんで、結果を出していきたい」。胸を借りてきた恩を返すためにも、負けられない相撲だった。

優勝すれば、三重県出身力士では元大関琴風の83年初場所以来37年ぶりとなる。今年は初場所で徳勝龍、7月場所で照ノ富士が幕尻優勝。波乱に満ちた1年を締めくくる場所で「3度目」も現実味を帯びてきた。志摩ノ海は「中途半端にならない、悔いの残らない相撲だけを意識している」。幕内に残る最低限の目標はすでにクリアも、別次元の重圧がのしかかる。「下克上」へ、大勝負の残り5日間が始まる。【実藤健一】

▽八角理事長(元横綱北勝海)「志摩ノ海は下から下から押し上げるのがいい。コツコツやるタイプでは。押し相撲だから特に精神的にも粘り強い。貴景勝は今日も、相手を見て考えながらの相撲で動きは悪かったが勝ったのは良かった。明日からまた行けるだろう」

▽高田川審判長(元関脇安芸乃島)「志摩ノ海はいい相撲を取っている。どんどん前に出ている。照ノ富士はずばっと入られたけど、根こそぎいきましたね」

◆志摩ノ海航洋(しまのうみ・こうよう) 本名・浜口(はまぐち)航洋。1989年(平元)7月11日、三重県志摩市生まれ。和具中(現志摩中)-明徳義塾高-近大。12年夏場所初土俵。16年名古屋場所新十両。19年夏場所新入幕。同場所10勝で敢闘賞。最高位は東前頭6枚目。幕下を除く各段で優勝(十両は2回)。179センチ、160キロ。得意は突き、押し。