日本相撲協会は22日、東京・両国国技館で臨時理事会を開き、1月の大相撲初場所中にマージャン店に出入りするなど、日本相撲協会が作成した新型コロナウイルス対策のガイドラインに違反した、時津風親方(47=元前頭時津海)の処分を協議し、退職勧告の懲戒処分を決めた。

日本相撲協会の懲戒処分は7項目ある。重い順に解雇、引退勧告、降格、業務停止(協会事業への従事停止)、出場停止、報酬減額、けん責と続く。今回、同親方の処分を「退職勧告」としたことについて、芝田山広報部長(元横綱大乃国)は「(一番上の)解雇とは違い、その次の重い処分。引退勧告は力士に該当するもので、それと同じ」と事実上、2番目に重い処分であることを説明。同親方から提出されていた退職届は受理され、解雇では支払われない退職金は、30%減額で支給される。また、時津風部屋付き年寄の間垣親方(元前頭土佐豊)が年寄時津風と部屋を継承することも決定した。

事案が表面化後、八角理事長(元横綱北勝海)は同協会コンプライアンス委員会に事実関係の調査と処分意見の答申を委嘱。同委員会の答申によると、昨年12月25日以降、原則として外出禁止の状況下、同親方は年が明けた1月の初場所中の18日からの5日間、東京・赤坂のマージャン店に出入りし、20日には新橋の風俗店、また23日からの2日間は赤坂のマッサージ店に出入りしていた。

時津風親方は昨年夏にも、友人と宮城県に不要不急の旅行をしてゴルフコンペにも参加。ガイドライン違反となり10月の理事会で「委員」から「年寄」への2階級降格処分を受けた。その後、体調を崩し入院したが、退院後の11月には八角理事長から、同様の違反を繰り返した場合、さらに厳しい処分となることを諭されていた。それにもかかわらず、今回の行動には「反省の態度や師匠としての自覚などみじんも見て取れることはできず、厳しい非難に値する」と断じた。

同親方や部屋にも感染はなく、約13年にわたり部屋を維持し、反省から退職届を提出している事情などは「最大限に考慮」しても「そのあまりにも身勝手な行動は、深刻な状況の中で、懸命に一月場所を開催した全ての相撲協会関係者の思いを踏みにじるものであって、時津風親方には、師匠としての自覚どころか、相撲協会の一員としての自覚すらもないのではないかの思いすら禁じ得ない」と断じた上で「もはや同親方を相撲協会に在籍させ続けることは相当とはいい難く、協会の賞罰規定に基づき、退職勧告の懲戒処分とするのが相当と判断した」とした。

理事会には時津風親方も姿を見せ、八角理事長が決議内容を言い渡した。同理事長が「何か言うことはないか」と発言の機会を与えたが、芝田山広報部長によると同親方は「ご迷惑をおかけしました」「すみませんでした」という内容の返事があったという。同理事長は「引き継ぎも迷惑なくやってください」「一般人になっても厳しい目で見られるから気をつけてください」という言葉があったという。

◆時津風正博(ときつかぜ・まさひろ)元前頭時津海。本名・坂本正博。1973年(昭48)11月8日、長崎県五島市生まれ。東農大から96年春場所で幕下付け出しデビュー。97年夏場所で新十両。98年秋場所で新入幕。07年秋場所後に序ノ口力士暴行死事件発覚で当時の師匠が日本相撲協会を解雇され、現役引退と同時に「時津風」襲名で部屋を継承。最高位は東前頭3枚目。通算466勝485敗43休。技能賞4回。