西前頭6枚目の阿炎(27=錣山)が、横綱照ノ富士から金星で千秋楽に初優勝の夢をつないだ。

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立ち合いのもろ手突きから徹底して突き放す攻めで、押し出した。阿炎の金星は18年名古屋場所で鶴竜からあげて以来3個目。関脇御嶽海が2敗を守って単独トップも、1差で追う照ノ富士、阿炎、琴ノ若の3敗勢にも逆転の可能性が残った。

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記憶はぶっ飛んでいた。「今は頭が真っ白です。夢中でとったんで。(立ち合い)当たったところまでしか覚えていない」と阿炎は言った。体の反応だけ。もろ手突きから左腕を伸ばしてのど輪。最後は右からいなして照ノ富士に背中を向かせると勢いのまま押し出した。完璧に攻め勝った。

「先場所同様、胸を借りる気持ちでした。内容は考えずに思い切りいこうと。考えたところで相手は横綱なんで、がむしゃらにいくしかなかった」

先場所も優勝を争う展開で14日目に横綱戦。結果は攻めながらも、最後は力差を見せつけられるような完敗。取組後、「(横綱に)自分の弱さを気づかせてもらった。もっと厳しくいきたい」と言った。その答えがこの日の相撲だった。

18年夏場所で白鵬、続く名古屋場所で鶴竜からあげて以来、3個目の金星。当時は2場所とも負け越しており、金星の価値も阿炎の相撲も別次元だ。やんちゃが過ぎての出場停止処分から、相撲にだけ向き合うことを決めて復帰してから一気に番付を戻してきた。その覚悟も金星となった。

「師匠(元関脇寺尾の錣山親方)に毎日、『勝ち負けは気にせずいけ』と言ってもらっています」と感謝する。だが、師匠は言う。「3場所相撲がとれなかった。その間に本人が変えようと思っただけ。自分で変わっただけで、私と(部屋付親方の)立田川(元小結豊真将)はちょっと教えるだけで、あくまで本人ですよ」。相撲とだけ向き合う人生に生まれ変わった。

初優勝の望みをつないだ千秋楽は、同じ11勝3敗の琴ノ若との対戦が組まれた。とにかくこの一番で勝つしかないが、「(優勝の可能性は)気にせず、明日の一番に集中したいです」と表情を変えずに言った。最後の一番。阿炎にとって夢を乗せた大勝負になる。【実藤健一】

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