西前頭3枚目の“鉄人”玉鷲(37=片男波)がまたも記録を打ち立てた。横綱照ノ富士を相手に1歩も下がらず押し出し。37歳5カ月と金星獲得の平成以降最年長記録を更新。同一横綱から3場所連続金星は大豪(元関脇)が栃ノ海から記録して以来57年ぶりとなる快挙も成し遂げた。東前頭11枚目の碧山が6連勝で単独トップ。三役以上の1敗力士も消え、優勝争いは混迷を深めてきた。

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横綱の圧倒するオーラが消えていた。2連勝中の玉鷲が与えた威圧感か。受けるような立ち合いの横綱に対し、37歳の鉄人は鋭い踏み込みから右おっつけで左ハズ。まわしを与えることなく一直線に押し出した。

「止まったらダメと思って一気に出ました。自分の相撲をとろうと、それだけを思っていました」

前日5日目に元関脇高見山を抜き、単独4位となる通算連続出場1426回を大関御嶽海撃破で飾った。記録を1427回に伸ばしたこの日は、横綱照ノ富士から3場所連続の金星。昭和以降5位、平成以降最年長の金星獲得記録を更新。さらに同一横綱から3場所連続金星は大豪(元関脇)以来57年ぶり、昭和以降で5人目となる記録も添えた。

「すごくうれしいですね。横綱に勝ったことが信じられないぐらいうれしいです」と言いつつ、言葉の抑揚はあまり感じさせない。長く、休まず土俵に上がり続ける秘訣(ひけつ)の1つが感情の起伏を起こさせないこと。何があろうと常に平常心を保つことができるメンタルの強さがある。

所属する片男波部屋の関取は玉鷲だけ。幕下1人、序二段2人の4人だけで、コロナ禍で出稽古もままならない状況に立ち向かっている。そんな厳しい環境でも玉鷲の心は波立たない。「(場所前の稽古は)師匠(片男波親方=元関脇玉春日)が考えてくれたことをしているので。よかったと思います」と言った。

三役以上で1敗力士もいなくなった。5勝1敗の玉鷲は堂々の優勝候補。2度目の賜杯へ期待は高まるが、「これからですね」と静かに語った。【実藤健一】

【6日目写真特集】“鉄人”玉鷲、照ノ富士を撃破3場所連続の金星 琴恵光は珍手とったり