優勝のプレッシャーからか、前日は迷いのあった隆の勝ですが、1日たって本来の立ち合いで当たれていました。その圧力が伝わったからこそ、霧馬山も外から攻めるしかなかった。左からおっつけて、そのまま押すのかなと思ったら、その左からまさかの外掛けです。あの体勢での足技ですから、隆の勝は後ろ重心になるだけで良かった。対戦成績7勝0敗の相性の良さもあって、本来の形でない左四つになっても余裕があったはずです。ただ霧馬山に墓穴を掘らせたのも立ち合いの当たり、圧力があったればこそです。

佐田の海は大栄翔に、うまく取られました。突き起こせば佐田の海は前に出てくるのが大栄翔は分かっていたのでしょう。だから頭からではなく脇を締めてノド輪を狙い、もろ手で起こしてから、タイミングを見計らったように引きました。佐田の海は、まわしを取りたかったところですが、そうはさせなかった大栄翔の地力とうまさ勝ちです。

照ノ富士は差すだけで勝負を決めました。千秋楽も元気のない大関御嶽海ですから苦しまないでしょう。隆の勝も佐田の海に勝って2人の優勝決定戦を想定した時、照ノ富士は体力、体調の問題で「1日2番は苦しい」と思っていました。ただ御嶽海相手の本割で負担はなさそうなので、やや横綱有利かなと。隆の勝は他力本願でなく、優勝したければ2人を倒すという気迫を持って臨んでほしいところです。(元横綱若乃花 花田虎上・日刊スポーツ評論家)