勝てば単独トップで千秋楽を迎えるはずだった照ノ富士が、よもやの負け方をしました。正代には奇跡を期待していましたが、あんな形で勝負が決まるとは思いもしませんでした。何度かビデオを見直すと、照ノ富士は左足を滑らせて自滅するように上体が崩れたように見えました。普段は慎重に取る横綱です。結果論かもしれませんが、無理に当たって出なくても外四つでもいいから、まわしを取るような相撲で良かったかもしれません。

逸ノ城は今場所、負けた相撲は全て踏み込んでいません。なぜ踏み込まなかったのか。前日の不戦勝の際に支度部屋で体を動かさず休養に充てたことが、その一因と思われます。普段のリズムを崩さないことは大切なことで、調子がいい時はなおさらです。

本割の番数が減りコロナを心配しながらの場所でしたが、これで千秋楽が面白くなりました。1差で追う貴景勝は動きの中で相手を左右に振るのが得意です。それでも照ノ富士は、同じ失敗をしない横綱です。正代戦の負けも生かし落ち着いて対応すると思います。だから優勝争いは逸ノ城次第といえるでしょう。明生と同様、宇良は取りにくい相手ですが、とにかく怖がらずに踏み込むことが全てです。(元横綱若乃花 花田虎上・日刊スポーツ評論家)