翔猿の変化がズバリとはまりました。立ち合いで右に変わって、かがみながら体をずらすと、中に潜りながら右を深く差して一気に休まず出ました。先場所優勝した玉鷲の、あっけにとられて驚いたような表情が翔猿の作戦勝ちを物語っていました。こうやって取ろうと練った作戦を、たとえ失敗しても実践できることがいいんです。体が小さいから同じような立ち合いでは、対戦相手は毎場所ほぼ同じだから覚えられてしまいます。土俵下の控えで翌日の対戦相手が見ていることもあります。この後、対戦する相手に「こんなこともやるんだ」と思わせるだけでも効果は十分です。

新小結でこの動きができるのも、心も体も乗っているからでしょう。30歳での新三役でスロー昇進のように言われますが、学生相撲出身ですし、決して遅いとは思いません。むしろ30歳という年齢を感じさせない若々しい相撲で土俵を沸かせています。この後も自分の思った通りに、いろいろなことをやって土俵狭しと動き回ってほしいと思います。絶対にやってはダメというのは引くことだけ。あとは余計なことは考えずに翔猿らしく、楽しむように取れば結果もついてくると思います。(日刊スポーツ評論家)