新入幕の西前頭17枚目・伯桜鵬(19=宮城野)が優勝争いに加わってきた。初の三役との対戦で小結阿炎を押し出した。

優勝争い1差で13日目はトップの錦木と対戦する。もし優勝すれば92年初場所の貴花田(のちの横綱貴乃花)以来の10代での快挙となる。錦木と北勝富士が2敗でトップ。大関とりの3関脇、豊昇龍、大栄翔、若元春はそろって敗れた。

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まだマゲも結えない19歳が、記録ずくめの優勝の夢をつないだ。初の三役との対戦にも伯桜鵬は「特に意識はなかった。いつもと同じ準備をしていきました」。小結阿炎との激しい攻防を最後は体ごとぶつかるような押し出しで制し、9勝3敗と優勝戦線に残った。

初めての幕内後半戦も「歓声が大きかった。それを力にできた」と言い、優勝争いには「今は相撲をとれることに感謝している」と19歳とは思えない強心臓ぶり。優勝すれば貴花田に次ぐ年少の19歳11カ月。所要4場所でとなれば、幕下付け出しでは元横綱輪島が72年夏場所で記録した15場所を大幅に更新する。そんな夢のようなストーリーも現実味を帯びてきた。

体は決して恵まれていないが、強靱(きょうじん)なメンタルが何よりの武器だ。阿炎との一番は自身が2回突っかけ、3回の待ったで取組後は審判部に呼ばれて注意を受けた。「審判の親方、阿炎関、お客さんに申し訳ない。迷惑をかけているので反省している。直さないといけない」と言いつつ、心の乱れはの問いに「ないです」と言った。

13日目はトップの錦木との直接対決が組まれた。自力で引きずり降ろす展開になれば、ざわざわは増す。不安点は阿炎を押し出した際に土俵で強打した左肩の状態。しばらく起き上がれず、気にするそぶりを見せたが「たくさんのお客さんが見ている中であの姿は情けない。ダメだと思っている」。何か起こしそうな空気感がある“令和の怪物”は「残り3日、やれることをやりたい」と力強く決意を込めた。【実藤健一】