両膝のけがで先場所を全休した大関貴景勝(27=常盤山)が、3連勝で勝ち越しを決め、7度目のかど番を脱出した。

関脇以上で今場所最初の対戦となった若元春を押し倒し。三役以上では唯一、3敗を守り、残り4日間は2差を追って優勝を目指す。1敗の前頭熱海富士は、初の三役戦で小結翔猿を破り、後続に2差をつけてトップを守った。

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難敵続きの終盤戦で、貴景勝の心技体は自然と、1段階引き上げられていた。立ち合いで頭から当たり、若元春をはじき飛ばすと、冷静に攻めた。回り込んで左四つに組み止めたい相手を、近づけなかった。一押しごとに体の軸を回転させながら、相手を正面に置いて対応。最後は懐に飛び込んで押し倒した。相手のかち上げの立ち合いにひるまず冷静に取る心、押し、いなしを駆使して主導権を握る技、土俵中心で体力を温存し、好機と見るや果敢に攻める俊敏性を支える体。全てで若元春を圧倒した。

かど番脱出を決めた安心感など皆無だった。「全然考えていなかった。結果が全て。負け越して(大関から)落ちれば、そういう実力しかない。勝てばその地位にいられる」。大関に見合わない結果しか出せないなら、自分は大関にふさわしくない-。「15日の結果論だから」と、かど番脱出で場所中に一喜一憂することなどは、貴景勝にとって最もかけ離れた価値観だ。

取組直後にガッツポーズのように振り回し、左腕を気にするしぐさを見せたが「大丈夫」と断言した。2差がついて自力優勝の可能性はないが「準備は自分でできる。変わらず準備をしていくだけ」。初志貫徹。最初から優勝しか見ていない。【高田文太】