大相撲で所要1場所で新十両、同3場所で新入幕というスピード出世で1位の記録を持つ「令和の怪物」伯桜鵬(20=宮城野)が、8月末に左肩を手術して以来、3場所ぶりに本場所に出場することが決まった。初場所(14日初日)の取組編成会議が12日、会場となる東京・両国国技館で行われ、2場所連続全休で幕内から西幕下5枚目に番付を下げた伯桜鵬は、初日に同じく幕内経験者の矢後と対戦することが決まった。この日、都内の部屋で取材に応じた伯桜鵬は「うれしい気持ちと、しっかりやらないといけないという気持ちの両方。今場所の目標は優勝」と、幕下15枚目格付け出しで臨んだ、昨年初場所の初土俵以来、2度目の幕下優勝に照準を定めた。

今月4日に相撲を取る稽古を再開し、9日には主治医から出場にゴーサインが出た。それでも師匠の宮城野親方(元横綱白鵬)が、将来を見据えてギリギリまで待つと決め、出場が決まったのは前日11日の夜だった。前日は一緒にでかけており、その帰りの車中で約30分間、伯桜鵬は師匠に「どうしても出たい」と、出場意欲を伝えた。すると師匠から「お前の覚悟が決まっているなら」と、出場を許可された。伯桜鵬は「師匠に感謝の気持ちと、勝って恩返ししたい思いがある」と、7戦全勝優勝で、出場を決めたことが間違いではなかったと示すつもりだ。

前日11日の申し合いは、部屋の十両天照鵬と3番取って全勝など、計16番で14勝2敗だった。ただ、稽古再開後初の関取との申し合いに加え、ぶつかり稽古で天照鵬に9分近くも胸を借りた稽古後には、左肩に痛みがあることも漏らしていた。それだけに宮城野親方は「相撲を取る稽古が圧倒的に少ない。私は『もう1場所かな』と思いっていました」という。それでも「本人が『頑張りたい』というので決めました。本場所と稽古場は違う。『7番勝って1場所で関取に戻るという気持ちでいけよ』と、叱咤(しった)激励しました」と、出場を決めたからには、言い訳せず結果で示すことを求めた。

伯桜鵬は「不安はない。少しでも不安があったら出ない。『どうしよう』という気持ちがあったら、相手にも、師匠にも、お客さんにも失礼。相手の研究をして、勝つ確率を上げて臨みたい」と、力強く話した。新入幕だった昨年7月の名古屋場所は、千秋楽まで優勝を争い11勝4敗で敢闘賞と技能賞に輝いた。ファンの期待が高まったが、その直後から2場所連続全休した。半年ぶりに本場所の土俵に立つ「令和の怪物」。物語の第2章“復活編”が、いよいよ幕を開ける。