大関経験者で西前頭筆頭の朝乃山(30=高砂)が、右の相四つの熱海富士に敗れ、今場所初の連敗で2勝4敗となった。立ち合いからすぐに右を差して左上手を引き、万全の体勢で寄り立てた。土俵際で残られ、押し戻されても、再び寄って出た。それでも俵を伝って残られると、さらに前に出たが、体勢を入れ替えるようにして上手投げで逆転された。

過去2度の対戦は、ともに勝っていたが、3度目の顔合わせで初黒星。初顔合わせだった昨年秋場所千秋楽は、勝てば初優勝だった熱海富士を破って壁になっていた。同場所で熱海富士は、優勝決定戦でも貴景勝に敗れ、初優勝を逃す悪い流れとなっていた。それだけに、相手は強い思いを抱いて臨んでいた。

取組後は終始険しい表情で「土俵際まで持っていったのに、寄り切れなかった自分が悔しい」と話し、唇をかんだ。「出たらダメなところ、一呼吸置かないといけないのもあった」と、強気に攻め続けるばかりでも、逆転を許しかねずに慎重になった場面もあった。強気と慎重さのバランスの難しい取組、相手との一番を終えて、不完全燃焼の思いの強さをにじませていた。

前日5日目は、悔しい黒星を喫した。過去全敗の大関豊昇龍に、5度目の顔合わせでも勝てなかった。得意の右四つになり、寄っていったが下手投げで逆転された。昨年からの4度の対戦は、全て相手の右からの投げに転がされた。取組後は「何回も同じ負け方をしている。アホですよね。そこは自分のダメなところ。アホかバカって言ってください」と、悔しさを隠さなかった。それだけに、この日は悪い流れを断ち切りたいという思いは強かった。同時に、喜んで出ていって逆転された悪いイメージから、積極性を欠いた。勝っても負けても、自身が納得できるような、前に出る本来の相撲を見失っている様子だった。