大相撲の横綱照ノ富士(32=伊勢ケ浜)が、夏場所(5月12日初日、東京・両国国技館)に向けて、調整のギアを1段階上げた。

27日、埼玉・所沢市で行われた春巡業に参加。朝稽古では前頭平戸海(24)を指名し、計7番取って5勝2敗と大きく勝ち越した。相撲を取る稽古は、千葉・木更津市で行われた25日に続き、今回の巡業で2度目。「いい動きをするヤツとやりたかった」と、スピードのある相手を選んだ理由を明かした。25日は重さもうまさも兼ね備える万能型の大関霧島を指名。この日は、瞬発力という“一芸”に秀でた相手との感覚を取り戻すなど、調整を本格化させた。

平戸海とは、大関から序二段まで陥落後、再起する中で幕下時代に1度対戦して勝っている。それ以降の対戦はなく、稽古したのはこの日が初めてだった。ただ、3月31日に始まった今回中、照ノ富士は常に稽古場には姿を見せ、土俵周りで基礎運動などで汗を流していた。連日、土俵に上がっている24歳の平戸海のことは「いい稽古をしていますよ。全体的に動きがいい」と、熱心な姿勢を含めて高く評価。後進の育成も横綱の使命だけに、今後を期待し、三番稽古の直後には、ぶつかり稽古でも約3分間、胸を出した。

初日を15日後に控えた、この日の稽古を終えて「悪くないんじゃないですか」と、手応えを口にした。3月の春場所は腰痛を悪化させて途中休場したが「その時と比べたら、全然いい」と、体の面でも復調を感じ取っている様子だ。敗れた相撲も、相手が力を十分に発揮する、もろ差しになった時の腰の重さなどを確認し、収穫を得たような余裕の表情を見せていた。

古傷の両膝痛や、先場所途中休場の要因となった腰痛は、依然として消えてはいない。「やっぱり、力を入れて稽古すると痛いんだよね」と打ち明け、膝と腰のどちらが特に痛むかについては「両方」と即答した。だからこそ「自分のことで精いっぱいですよ。必死にやっています」と、謙遜したが、稽古後も土俵下で平戸海にアドバイスを送っていた。横綱の責務も果たしながら、節目の10度目の優勝に向けて準備を進めている。【高田文太】