日本相撲協会は4日、福岡市内の病院で九州場所(9日初日、福岡国際センター)の新弟子検査を行った。受検者は3人。

そのうちの1人、中村部屋の武田琉斗(18=中村)が、14分遅刻するハプニングが起きた。だが検査に立ち会う審判部の部長で理事の高田川親方(元関脇安芸乃島)、副理事の藤島親方(元大関武双山)と粂川親方(元小結琴稲妻)という3親方の温情で、到着を待ち、3人全員が身長167センチ以上、体重67キロ以上の体格基準を満たした。

午後1時14分、170センチ、158キロと、丸々とした体の武田が、小走りで検査会場に到着した。親方衆の中でも、屈指のこわもてがそろった3人の審判部幹部を見て、謝罪する声も震えていた。それでも藤島親方は「慌てなくていいよ。血圧も上がっちゃうから」と、やさしく語りかけた。実は武田は、検査開始が午後2時開始と聞かされていた。

相撲界には「相撲時間」と呼ばれる、縦社会を象徴する暗黙のルールがある。先輩よりも早く集合時間に間に合わせようと心掛けるため、前倒し、前倒しで集合する風潮で、何ごとも、予定時間よりも早く始まるというものだ。事実、新弟子検査は通常、検査に立ち会う親方衆がそろったところで開始するのが慣例。「午後1時開始」とはいいながら、30分以上前倒しで開始することも珍しくない。それが、新弟子の遅刻による検査の開始遅れは、前代未聞ともいえる。

午後12時20分になっても、武田が姿を見せないため、相撲協会関係者が、中村部屋に電話した。すると、武田はまだ佐賀県に構える部屋宿舎で食事中だった。そこから急行。武田は「もともと緊張しやすい性格ですが、もっと緊張しました」と、振り返った。力士数も多かった、平成前期ごろまでなら“失格”で、翌場所再受検となっていたかもしれない。ただ、各部屋が新弟子獲得に苦戦する現在だからこその温情措置ともいえる。

大分・佐伯市出身の武田は大分豊南高に在学中で、ご当所の九州場所で初土俵を、という自身と、同郷の師匠、中村親方(元関脇嘉風)の願いで、今場所の新弟子検査を受検した。武田は「失格にならなくて本当によかったです。理想は中村親方。小さくても戦えるところに憧れます」と話し、最後はホッとしたように笑顔を振りまいて話していた。内臓検査の結果を待ち、九州場所初日に合格者が発表される。