[ 2014年6月28日7時3分

 紙面から ]成田空港で大勢のファンの出迎えを受けるザッケローニ監督(手前)ら日本代表選手

 W杯ブラジル大会を戦い終えた日本代表が27日、成田空港着の航空機で帰国した。空港には約1000人のファンが集まったが、4年前に行ったような帰国会見はなし。選手も一様に表情は硬いままで、敗退のショックをうかがわせた。一方、C大阪に所属するFW柿谷曜一朗(24)とMF山口蛍(23)はチームへの合流を早め、次へ向けて早くも動きだす。

 集まった1000人から飛び交う黄色い声とは対照的に、帰国した日本代表の選手らは硬い表情のままだった。隊列の先頭を歩いたザッケローニ監督だけは、ファンに向けてわずかに笑顔を見せ、手を振った。だが、続いて歩いたGK川島らは、ファンに目を向けることもほとんどない。警備員50人が配置されたが罵声や厳しい声はなかった。中傷する横断幕も掲出されなかった。だが選手はうつむき加減に、足早に、専用の出口に姿を消した。1分け2敗という結果が、選手の顔から笑顔を消していた。

 成田市内のホテルに移動した後も、表情は変わらなかった。FW大久保は「正直、空港ではもっと厳しい声が飛ぶものかと思っていた。送られた声援に驚いた」と素直に話した。厳しい声があるだろうと、選手同士でも覚悟していた。想像と反対の温かい声にも安堵(あんど)する気にはなれなかった。選手同士でサッカーの話をすれば息が詰まる。長いフライト時間となった機内では寝ずに、他の選手らとトランプなどに興じて気を紛らわせたという。「そうでもしなきゃ、やってられないでしょ」と気持ちを切り替えるのに必死だった。

 各選手はつかの間のオフを挟み、新シーズンや中断明けのJリーグに臨む。柿谷と山口のC大阪の2人は、クラブから7月3日からの合流を指示された。だが自主的にオフを2日返上して、7月1日から合流する予定だ。解散した後はすぐに、27日夜のうちに大阪へ移動。今後に備えた。思い知らされた世界のカベを破るため、動きだした。

 ブラジルでの悔しさを心に刻んだまま歩み始めることが、4年後のロシアにつながる。うなだれたままの顔と心を前に向かせ、次の1歩を踏み出すしかない。【高橋悟史】<日本代表過去の帰国>

 ▼98年フランス大会

 1次リーグ3連敗で敗退。6月29日に成田空港に帰国した際、無得点に終わったFW城が、30歳の男性にペットボトルに入ったスポーツ飲料をかけられた。会見場で城は「少し水がかかっただけ」と冷静に対応し、屈辱に耐えた。集まったファンは約1000人。警備は110人。

 ▼06年ドイツ大会

 高かった期待を裏切り、1次リーグ敗退。6月24日に成田空港に帰国し、直後の会見で川淵会長が後任監督としてオシム氏と交渉していることを明かし、総括より次期監督が注目された。ジーコ監督は別の日に退任会見を設定し、当日は空港から別行動で帰宅した。約700人が集まり、警備は100人。

 ▼10年南アフリカ大会

 1次リーグを2勝1敗で突破。決勝トーナメント1回戦でパラグアイにPK戦で敗退。7月1日に関西空港に帰国した。会見で岡田監督がFW森本に「南アフリカの歌を歌うそうです」とむちゃぶりし、森本も「歌います。あ~、あ~」と披露した。ファンは空港館内に約2700人、館外約1500人の計4200人。警備は約200人。