6月17日に開催されたAKB48選抜総選挙で、20位に入ったNMB48須藤凜々花(20)が、壇上で突然結婚を発表した騒動について、AKB48グループ取材歴の長い日刊スポーツ新聞記者2人とフリーライター2人が集まり、真面目にとことん語り合った。連載2回目。

 A(スポーツ紙記者) 須藤の発言は、そもそもプロレスに通じるところがありますよね。

 D(フリーライター) そうです。アントニオ猪木-ホーガンの第1回IWGPタイトルマッチなんですよ。猪木が勝つと思われていた試合なんだけど、猪木からしてみれば、そんな見え透いたエンターテインメントなんて、つまらない。自分たちの試合が、外に届くにはどうしたらいいか。いわば、舌を出して、失神して負けることだ、と考えたわけです。そうすると、ニュースで流され、一般紙でも報道される。それと同じだ、と思いました。

 A 秋元康さんや幻冬舎見城徹社長のような世の中で仕掛け人、名プロデューサーと呼ばれる人からすると、セオリータイプではない須藤は異端児で、むしろ興味を引く要素が詰まっているんですね。

 D こんなタイミングを狙ってたんじゃないかとさえ思いました。そういうものを、今回AKBで見ました。

 A 私もDさんと同じ感覚です。ファンは気の毒だし、確かにとんでもない突きつけ方です。個人的にも、もっと彼女にこの先のエンターテインメントを盛り上げてほしかったので、ここで卒業は残念だけど、こんな結婚宣言が現実で起こりうるのは、秋元康プロデュースで、常にガチで進んできたAKBでしかない。

 D もともとAKBは、お客が嫌がることを平気にやってきましたよね。チームの組閣など最たる例です。しかも、それをお客に見せる。そして感情をグラグラに揺さぶるんです。

 A AKBは最近までプロレスのドラマ(「豆腐プロレス」)をやっていましたが、昔から秋元さんは「AKBはプロレスだ」と言ってました。

 D 今回の件を秋元さんが知っていたかどうかはともかく、AKBとして、プロレスを超えたことをする子が出てきたという満足感は、きっとあるはずです。

 A 秋元さんと初めて会ったとき、「俺はAKBでアントニオ猪木とタイガー・ジェット・シンの『伊勢丹事件』のようなことがおきて欲しい」と言っていたことを思い出しました。

 B(スポーツ紙記者) 猪木夫妻が新宿伊勢丹で買い物中に、シンが乱闘をしかけた「事件」ですね。

 D 「事件」なんですよね。秋元さんにとって、AKBは「(衆目を集める)事件を起こすための舞台装置」であることが、理想なんじゃないですかね。

 A 須藤の事件は、全9回の総選挙で、最も衝撃的なことでした。坂道グループが今、最も勢いがあると言われていても、スポーツ新聞の1面になることは考えづらい。でも、総選挙での結婚宣言は文句なしで1面なんです。そういう意味ではAKBというものは別格だなと思いました。

 C 社会性が出てこないと、新聞の1面にならないからね。

 A 極論を言えば、ファンに優しいグループではない(苦笑い)。

 D ファンをこんな谷底まで突き落とすグループはないですよ(苦笑い)

 A 一方で、あんなにファンを熱狂させるイベントは他にないのも事実です。従来のアイドルも握手会やコンサートはあるけれど、総選挙はない。総選挙にかけるファンの熱というのは、ほかにありません。須藤ファンは顕著な例ですけど、選挙活動を仲間と一致団結してやることが、とにかく楽しいんだそうです。世間には「そんなことにお金を使って」と、なかなか理解してくれない人もいる。でも、彼らからすると、草野球チームや地元の夏祭りでおみこしをかつぐような、一つのサークル活動として楽しんでいるんです。さらに、夢を追う少女の運命を、自分たちが切り開いてあげられるという手応えを知ってしまうと、ほかでは得られない充実感も与えてくれるようです。

 D 安定した楽しさを求めるなら、見るべきものはAKB48グループじゃない。こういう事件は、エンターテインメントとして完成され尽くしている宝塚でも起きないですから。(続く)