25年前に「スピード」で注目されて以来、キアヌ・リーブス(54)のアクション・シーンにはいつも粗削りの魅力を感じてきた。

5年前に第1作が封切られた「ジョン・ウィック」シリーズで演じるのは伝説の殺し屋で、格闘術のプロとしてアクションはどんどん様式美の方に流れていきそうなものだが、キアヌらしい人間くさい動きが、そのままこの作品の味わいになっている。

前作「-チャプター2」(17年)で、ついに裏社会のおきてを破ってしまったジョンが、あらゆる組織から追われるサバイバル戦を描くのが今度の第3作「-パラベラム」(公開中)だ。その首に掛けられた懸賞金は1400万ドル。絶体絶命の中で、数少ない協力者とともにジョンの反撃が始まる、という筋立てだ。

このシリーズの特徴は、打撃や投げに加え、近接戦で拳銃が使われることだ。片手を組み合いながら、もう一方の手では銃を撃ち合い、また、これをよけるという離れ業だ。「マトリックス」のアクションを担当していたチャド・スタエルスキ監督ならではの演出なのだろう。新鮮な驚きとどこかで見たことがあるような不思議な既視感もある。

そういえば、往年の仁きょう映画では、近距離でも銃弾の命中率はそれほど高くはなかった。出入りで活躍したのはもっぱらチャカ(拳銃)より長ドス(日本刀)である。

今作でジョンの最大のライバルとして登場するのが東洋的な顔立ちをした刺客ゼロで、ハワイ生まれのカンフーの達人マーク・ダカスコスが演じている。ゼロが巧み操る必殺の武器も刃物であり、このゼロとの死闘を見るうちにいつのまにか仁きょう映画を思い出したのだと思う。

今作のジョンはそんな近接ガンアクションに加え、厩舎でのシーンでは強烈な馬の後ろ脚を利用した「馬(マー)・フー」なる新たなテクニックも披露する。キアヌの乗馬姿も美しい。そして一番の魅力は随所に登場する走るシーンだ。陸上選手のような整った美しさはないが、スーツ姿での荒い息づかいが人間くさい。何ともいえないリアリティーがある。

ジョンを取り巻く面々にはアンジェリカ・ヒューストン、ローレンス・フィッシュバーン、そしてハル・ベリーという個性派がそろい、シリーズでおなじみになったホテル支配人のイアン・マクシェーン、とコンシェルジュのランス・レディックにもしっかり見せ場が用意されている。

キアヌとアクション、脇を固める劇画チックな個性派たち。さらにはきゃりーぱみゅぱみゅの「にんじゃりぱんぱん」が挿入歌として使用され、おなかいっぱいの娯楽作品に仕上がっている。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)