アーノルド・シュワルツェネッガーやジェニファー・アニストン、ビヨンセ、グウィネス・パルトロー、ジェニファー・ロペスら多くのハリウッドセレブが暮らすロサンゼルスの高級住宅地ベルエアで6日未明に発生した火災は、ようやく鎮火の兆しが見えてきました。ロサンゼルス市内を南北に走る高速道路のすぐ脇の山が激しく燃える様子は日本のニュースでも紹介されたので見た人も多いと思いますが、ベルエアはセレブに人気の高級住宅地ビバリーヒルズの北西に位置する豊かな緑に囲まれた山間部で、高速道路の東側のエリアです。

 「スカーボウル」と名付けられたこの一帯の火災は、4日にロサンゼルス(LA)北部ベンチュラ郡で発生した最初の火災から2日後の6日午前5時頃に発生。極度に乾燥した空気と「サンタナ風」と呼ばれる強い季節風にあおられて被害が拡大し、9日の時点で422エーカー(約1.7平方キロメートル)を焼失。パリス・ヒルトンやドラマ「glee/グリー」のレイチェル役で知られるリー・ミッシェル、アリアナ・グランデの両親らが避難したことをSNSで報告するなど、セレブが暮らす豪邸にも火の手が迫り、およそ700世帯に避難勧告が出ていました。一時は高速道路の反対側にある観光名所としても知られる美術館ゲッティ・センターにも火の手が迫りそうになり、近郊のカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)などLA市内の多くの学校も休校となり、灰と煙でぜん息の症状を訴える人が増えるなど、市民生活にも多大な影響を及ぼしていましたが、10日には85%が鎮火。避難勧告も徐々に解除され、自宅に戻ることが許された人たちが家の無事を確認して胸をなでおろしているようです。

 ロサンゼルスの豪邸の多くは、景観を重要視する傾向があり、森林に囲まれた山の尾根部分に建っていることが多く、ベルエア地区も山の尾根部分に道路を敷いて両脇に豪邸が建っており、細くカーブの多い坂道が続く道路が消火活動の妨げになっているともいわれていました。そのため、地上からの消火活動に加えて行われたヘリコプターや小型飛行機、ドローンを使った空からの消火活動が功を奏し、6軒の家屋と12の建物が全焼するにとどまったといわれています。被害を受けた中には、メディア王のルパート・マードック氏が所有するワイナリーも含まれていましたが、建物の一部が焼失したのみで自宅などは無事だった模様。すでに閉鎖されていた高速道路も再開通され、ゲッティ・センターも8日には開館しており、被害を最小限で食い止めることができた消防士に称賛の声が上がっています。

 LAはこれまでも大規模な山火事を何度か経験していますが、今回の火災と同じベルエア地区では1961年にも大規模な山火事が発生しており、当時は女優ザ・ザ・ガボールや俳優ロバート・テイラーら多くのハリウッドスターの豪邸を含む500もの家屋が焼失しました。また、2007年には海岸沿いの高級住宅地マリブで発生した山火事でも、ハリウッドスターを含む数千人が避難を余儀なくされ、数百万ドル相当の邸宅が50棟以上焼失したといわれています。今回の火災の原因は明らかにされていませんが、カリフォルニアで起こる山火事の多くは放火以外にも干ばつと高気温や熱波、枯れ葉同士が強風で擦れた摩擦によるもの、雷などの自然発火が多いといわれています。

 スカーボウルの火災は鎮火のめどが見えてきましたが、サンタナ風の影響で現在もLA近郊や南部サンディエゴなど6カ所で火災が起きており、被害が拡大しています。火災の影響で映画やドラマの撮影が中止になるなど経済損失も出ているほか、クリスマスに向けて観光への影響も心配されており、一刻も早い事態の収拾が望まれています。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)