アカデミー賞授賞式まで6週間を切りましたが、いまだに司会者は決まっておらず、今年は司会者不在となる可能性が高まっています。ことの発端は昨年12月に司会者に抜てきされたコメディー俳優のケビン・ハートが過去の同姓愛者に対する差別的なツイートを掘り起こされて批判されたことが原因で、わずか2日で辞退を発表したことにあります。その後、新たな司会者選びは難航し、2017年から2年連続でホストを務めたジミー・キンメルや06年と14年の司会者エレン・デジェネレスの復帰が取りざたされるも、共に辞退したといわれています。アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーは、準備期間などを考慮すると代役を立てるのは時間的に厳しいと考えており、今年は司会者抜きでスターたちが持ち回りで進行していくことになるだろうと米メディアは伝えています。

そもそも、なぜここまで代役選びに苦戦することになったのでしょう。原因の一つは今回の一件が尾を引いていることは間違いありません。6日に行われたゴールデン・グローブ賞授賞式で司会を務めたコメディー俳優アンディ・サンバーグと女優サンドラ・オーが、「なぜ今晩のホストは私たちなのかというと、それは過去に問題発言をしていないのが、もはやハリウッドで私たちしかいなかったからよ」とかなりダークなジョークで会場を盛り上げていましたが、過去のSNSでの発言が掘り起こされて批判をされるのは今回に始まったことではなく、品行方正な司会者を探すのは困難を極めたことは想像に難しくありません。また、映画芸術科学アカデミーは過激なジョークや個性が強すぎるコメディアンの起用には消極的な一方で、なんとかして視聴率低迷を食い止めたいという思惑もあることから人選が難航しているのもうなずけます。また、引き受ける側からしてもプレッシャーが大きい上に1万5000ドルとギャラが安いオスカーの司会はあまり魅力的ではなくなっているということもあるでしょう。

司会者抜きの授賞式は実に30年ぶりのことですが、水面下ではすでに視聴率回復の起爆剤としてマーベルのスーパーヒーローたちが集結する映画「アベンジャーズ」のキャストを集結させる計画があるとハリウッド・レポーター誌が報じています。正式な発表はないものの、授賞式を放送するABCテレビはディズニーの傘下であることや「アベンジャーズ」シリーズは4月26日に完結編「アベンジャーズ/エンドゲーム」の公開を控えていることからプロモーションにもなるため、実現する可能性は高いと見られています。実現すれば、アイアンマン演じるロバート・ダウニー・Jrやキャプテン・アメリカのクリス・エバンス、ハルク役のマーク・ラファロらがオスカーのステージに勢ぞろいすることになり、若い世代にもアピールする絶好の機会となるでしょう。

注目される91回授賞式は2月24日にハリウッドのドルビー・シアターで行われます。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)