アレック・ボールドウィン主演の西部劇映画「Rust」の撮影現場で起きた銃の誤射による撮影監督の死亡事故から21日で、1カ月が経過しました。

リハーサルで助監督から安全であることを意味する「コールドガン」だと言われて受け取った銃をボールドウィンが発射し、撮影監督ハンナ・ハッチンズさんが死亡し、ジョエル・ソウザ監督が負傷した事故を巡っては、その後の警察の捜査で銃に実弾が装填されていたことが明らかになっています。この間、プロデューサーでもあるボールドウィンをはじめ、助監督や武器担当者ら関係者がスタッフから2件の民事訴訟を起こされているものの、警察の捜査は継続中で、依然としてなぜどのような経緯で実弾入りの銃が撮影現場に持ち込まれたのかは分かっていません。

ハリウッドでは1993年に起きた撮影中の発砲事故でブランドン・リーさんが亡くなった悲劇を受け、撮影現場での銃の取り扱いに関する安全ルールが強化され、実弾を撮影現場に持ち込むことは禁止されています。しかし、今回の事故を受けて撮影現場での銃の使用の是非についても議論が巻き起こっています。

「銃の使用を禁止すべき」という意見も多い一方、ハリウッドのあるベテラン武器担当者は「起こるはずのない事故で、怒りを覚える」とロサンゼルス・タイムズ紙の取材に語っており、今回の事故は完全に予防可能なものだったとし、撮影現場での銃の禁止は「見当違い」との見解を示しています。低予算の作品だったこともあり、ほとんど未経験に近い新人武器担当者を責任者にしたことが悲劇を招いたと批判する声も多くありますが、撮影で実際に銃を扱ったことのあるハリウッドスターたちからも様々なリアクションが寄せられています。

◆スカーレット・ヨハンソン

スカーレット・ヨハンソン(17年撮影)
スカーレット・ヨハンソン(17年撮影)

ブラック・ウィドウを演じた「アベンジャーズ」シリーズや日本発のSFコミック「攻殻機動隊」を実写化した「ゴースト・イン・ザ・シェル」(2017年)などで銃を扱った経験のあるスカーレット・ヨハンソンは、「とても悲劇的な事故であり、完全に予防可能な事故だった」とUSAトゥデイ紙にコメント。これまでたくさんの異なる武器を扱ってきたというヨハンソンは、自身はラバーガン(ゴム製の銃)を使うことが多いと語り、「ラバーガンを使わない理由はないので、これからはそちらの方向に流れが進んでいくような気がしている」と述べ、安全なフェイク銃の使用が主流になるとの考えを示しています。

◆ドウェイン・ジョンソン

「ワイルド・スピード」シリーズなどで知られるドウェイン・ジョンソンも、ラバーガンを支持すると表明したスターの一人。新作映画「レッド・ノーティス」のプレミアでバラエティ誌の取材に、自身の製作会社が関わる全ての映画やテレビ番組で、「今後は本物の銃を一切使わない」と宣言。「今後はラバーガンを使い、撮影後に編集で処理する。費用がいくらかかるかは心配していない」とコメントし、今回の事故を受けてすぐに自身の製作チームと連絡を取り、今後の対策について話し合ったことを明かしています。

◆ジョージ・クルーニー

「アウト・オブ・サイト」(1998年)や「ラスト・ターゲット」(2010年)などで銃を扱ってきたジョージ・クルーニーは、コメディアンのマーク・マロンのポッドキャスト「WTF」に出演した際に、予算削減のために経験のない武器担当者を雇ったことが間違いだったと製作陣を批判。武器担当者は経験豊かなベテランでなければならないと語り、お金を削るところを間違っていると述べ、「銃を扱って良いのは武器担当者だけだ」として安全管理が徹底されていなかったことを非難しています。「銃を撃つ前に必ず自ら中身を確認し、銃口を向ける相手や、その先にいるスタッフに対しても中身を見せて確認してもらう。銃を使い終わったら毎回必ず、武器担当者に銃を返却する」と、自らの銃の扱いについても語り、銃を扱うには常に注意を払うことが重要だと述べています。

◆アンジェリーナ・ジョリー

アンジェリーナ・ジョリー(14年撮影)
アンジェリーナ・ジョリー(14年撮影)

「トゥームレイダー」シリーズなど数々のアクション映画に出演し、暗殺者を演じた「ウォンテッド」で弾道が曲がる射撃テクニックを披露して話題になったこともあるアンジェリーナ・ジョリーは、「これまで銃を扱う機会がとても多かったので、常に細心の注意を払ってきました。私が監督する作品の現場では、仕事のやり方や確認作業に特定の手順があり、非常に真剣に取り組んでいます」と安全第一であることを強調しています。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)