劇団四季が6月17日にクラウドファンディングを始めたところ、わずか4日で目標とした1億円を達成した。その後も9月30日まで続行しており、26日夜には1億4000万円を超えている。

実は、劇団四季がクラウドファンディングを始めた時に、ちょっと驚いた。しかも、始めた理由として「かつてない経営危機」を挙げたことにも意外だった。というのも、四季と言えば、日本の劇団の中で、超優良劇団だからだった。演出家で創立者の浅利慶太氏は、その豪腕で、わずか10人でスタートした学生劇団を、昨年度の年間公演数が3181回、総動員数は約300万人、そして売上は242億円を超え、所属する劇団員は約1400人という巨大劇団に育て上げた。しかも無借金という健全経営でもあった。

しかし、新型コロナウイルスが、巨大劇団の屋台骨に大きな影響を与えた。2月下旬から6月末までの公演中止で、劇団の年間公演数の3分の1にあたる1000回公演が中止となった。7月14日から再開したとしても、座席数は半分程度にしての上演を余儀なくされている。そして、ロングランを支える地方からの修学旅行生もしばらくは期待できない状況にある。

先日、四季の吉田智誉樹社長に話を聞いた時、「しばらくは大丈夫ですが、長引けば、劇団の継続も脅かされるかもしれません」と危機感をにじませていたが、まさに、今、大きな岐路に立っている。そんな四季の現状に、クラウドファンディングには1万500人の支援があった。1000円から10万円まで15のコースがあり、最高額の10万円を支援した人は191人を数えている。

そのほか、こまつ座は1000万円の目標に1147万円も集まり、次の目標を2000万円にして続行中。創立91年の人形劇団プークは本拠であるプーク人形劇場の存続支援のためクラウドファンディングを行ったところ、340万円が集まった。劇団はどこも台所事情は厳しいけれど、ファンの熱い支援で生き残りを図っている。新型コロナウイルスの影響によって、劇団が解散したという話がまだ聞こえてこないのが、せめての救いである。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)