毎月のように上演されるシェークスピア作品ですが、10月には異色のシェークスピア舞台を見ました。
それは悲劇「リア王」と喜劇「十二夜」でした。「リア王」は過去に松本幸四郎(現松本白鸚)、平幹二朗、山﨑努、最近は木場勝己、段田安則が演じていますが、今回のリア王役は大竹しのぶ。老いた人間の傲慢(ごうまん)と焦燥、そしてすべてを失った時の絶望と悲哀を見事に体現して圧巻でした。
「十二夜」もかつて蜷川幸雄演出で尾上菊之助(元8代目菊五郎)を中心とした歌舞伎版の「NINAGAWA十二夜」が上演されていますが、今回は双子の妹ヴァイオラを正門良規が演じたのをはじめ、男性が女性役、女性が男性役を演じていました。男装して「シザーリオ」と名乗るヴァイオラに片思いする伯爵令嬢オリヴィアの大鶴佐助、オリヴィアの叔父で飲んだくれのトービーの阿知波悟美、堅物執事のマルヴォーリオの峯村リエが大奮闘。一直線にヴァイオラ愛を貫く大鶴オリヴィアの弾けっぷりが鮮烈で、阿知波トービーのいいかげん、峯村マルヴォーリオが偽りの恋の誘惑に勘違いする滑稽さなど、祝祭感あふれる、とても楽しい舞台でした。
もともとシェークスピアの時代は、女性は舞台に立つことがなく、少年が女装して女性役を演じていました。日本には男性が女性役を演じる「歌舞伎」、女性が男性役を演じる「宝塚歌劇」などがあり、性差を超えた舞台とも相性がいいのかもしれません。ともに演劇の可能性の広がりを感じさせる、刺激的な舞台でした。【林尚之】




