第1作の公開を控えた7年前のことだ。試写を見た東映の岡田裕介社長(当時)は一見ぬるい内容に腹を立て、橋本一監督を1時間余り説教したという。が、映画は予想外のヒット。年末の映画賞の席上では、一転シリーズ化を明言した。

 「男はつらいよ」シリーズにも似た逸話があるが、興行のプロが「ぬるい」と感じるものの中にこそ、人情の機微に触れる何かがあるものだ。三枚目の中に芯の強さを秘めた探偵(大泉洋)と妙に腕力の強い大学生(松田龍平)のコンビが醸す空気はほっとさせる。NHKでは「サラリーマンNEO」を企画した吉田照幸監督は、その辺を心得ていて、2人の会話の間合いにこだわり、いい意味の脱力感を演出している。

 寒風の中、裸で船首に縛り付けられるシーンは、他の俳優だったら目を見張る。そこを当たり前のように見せてしまうところに大泉の持ち味がある。

 大泉の丸みがあるから、事件のカギを握る北川景子や敵役リリー・フランキーが余計にとがって冷酷に見える。舞台となる札幌の空気もきりっと感じる。

 探偵の行き先にはいちいち味があり、喫茶店の看板娘、安藤玉恵がいい。【相原斎】

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