連続殺人事件が起こると推測されるホテルを舞台にしたミステリー。ホテルで潜入捜査する新田刑事を木村拓哉が、ホテルマンの山岸を長沢まさみが演じた。2人はさまざま起こるトラブルに対処し反目しながら、事件に立ち向かう。

「演じる」ことが何層にもなっている。木村は、宿泊客の前ではホテルマンを演じ、スクリーンの前の観客に対しては、ホテルマンを演じる刑事を演じているわけだ。優秀な山岸からホテルマンとしての指導を受け、前半から後半にかけて目つきや所作、居ずまいが緩やかに変化していくが、トラブルが起こるたびにちらちらと見せる刑事らしい目がある。シーンごと、カットごとに刑事とホテルマンとを往復している。エレベーターの中での刑事然とした振る舞いを見せたかと思えば、扉が開いた瞬間に表情を変える場面は、シチュエーションと芝居のおもしろさ、両方があった。

長沢は、背筋をぴんと伸ばしてさっそうとし、デキることをことさら主張しない女性を、自然に演じている。東野圭吾氏の原作小説はシリーズものになっている。映画版でもまた、木村と長沢を見たい。【小林千穂】

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