人生100年とも言われる時代。「老後2000万円不足」とされる老後資金への関心は高い。タイトルは深刻だが、次々に起こるお金の問題がユーモラスに描かれ、久しぶりに肩を震わせて笑った。

垣谷美雨氏のベストセラー小説を原作に、節約がモットーの53歳の主婦・篤子を天海祐希が演じる。夫の章(松重豊)とコツコツとためてきた老後資金が親の葬式に330万円、娘の派手婚に300万円…。「老後は安泰」のはずだったのに、夫の失職、篤子もパートをクビになり、仕送りを節約するために同居することになった姑(しゅうとめ)・芳乃(草笛光子)が超のつく浪費家…。

医師や刑事などキリッとした役柄の多い天海だが、ごく普通の主婦が降りかかる災難に真剣に立ち向かい、時にコミカルに、時にほろりとさせる。コメディエンヌとしての新たな魅力の一面を見せている。

草笛のヨガのシーンは88歳とは思えない身体の柔らかさに驚いた。お金は大事なものだけど、人生を豊かにしてくれるものは何か? クライマックスで天海と草笛がダンスを踊るシーンは温かい気持ちにさせてくれる。【松浦隆司】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)