漫画やアニメ、映画作りの舞台裏を描いた作品は、あまたあるが…1クラス上の熱量と本気を見せられた1本だ。製作と配給の東映は、辻村深月氏の14年の同名小説の実写化にあたり、同氏がこだわる劇中アニメの質を担保するためグループ会社で世界屈指の制作会社・東映アニメーションの協力で制作陣、声優含め納得できる陣容を集めた。劇中アニメの1本は、同氏が全12話のプロットも書いており劇中アニメで終わらせるのは実にもったいない。

もちろん、本筋の実写の熱量も半端ではない。主演の吉岡里帆は、念願のデビューを果たした新人アニメ監督の情熱と、裏腹の制作に苦悶(くもん)する姿、ルックス推しの取材が相次ぐことへの葛藤など、演技を超えて人物として生きる姿を作品に刻み込んだ。4月の完成披露試写会で「熱く、燃えているんだけど伝えられない…同世代だから分かる」と語ったように、自分が人として思うところも落とし込んだのだろう。

主人公の前にライバルとして立ちはだかる、憧れの天才監督を演じた中村倫也が、持ち前の華やかなイケメンぶりを存分に発揮しつつも裏の苦悩をさらけ出す演技も出色だ。何より、一癖も二癖もある敏腕プロデューサーの、心の内をちりばめていく柄本佑が、実にうまい。見ないのは、実にもったいない1本だ。【村上幸将】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)