第81回米アカデミー賞外国語映画賞を受賞した「おくりびと」で知られる、小山薫堂氏が入浴の伝統や精神を受け継ぐ「道」として、茶道、華道と同様に「湯」に向かう心の姿勢を、15年に提唱した「湯道」をテーマに完全オリジナル脚本を担当。日常の入浴の幸せやコミカルな笑いに、心がほぐれる温かさがあった。

亡き父の残した銭湯を巡って兄弟が争う。父の葬式に顔を出さなかった兄役の生田斗真は、銭湯を建て替えるために実家に舞い戻る。そんな兄を恨み、銭湯を切り盛りする弟役の濱田岳は、聞く耳を持たない。いざこざの中、弟が入院し、風呂炊きに挑戦した兄は父との記憶を思い出し、銭湯の良さを再確認。そんな兄に弟も徐々に心を許す。

作中では湯道は古くから続く伝統として登場。銭湯の常連でありながら、湯道に魅了され、自宅にヒノキ風呂を作ることを夢見て、悩みながら着手する郵便局員役の小日向文世は、その精神と作法をつつましく、時にコミカルに演じる。

銭湯の今後を左右する兄弟の確執、湯道に魅了される人々、銭湯に集う人々の群像劇が見られる。常連客など登場人物は多いが、それぞれのエピソードが丁寧に描かれ、背景も明確だ。

銭湯の表看板、銭湯内でのおけを使った合図などお風呂雑学も満載。泣いて、笑って、整って。上映後、熱い湯につかりたくなること間違いなしだ。【加藤理沙】

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