「武川智美(むかわ・ともみ)」と耳にしてピンとくる人は、なかなかのラジオファンだ。MBSラジオ「上泉雄一のええなあ!」「メッセンジャーあいはらのYouはこれから!」「こんちわコンちゃんお昼ですょ!」にレギュラー出演。土曜の「それゆけ!メッセンジャー」でも定期的に、その声を聞かせている。
MBS入社が1992年(平4)だから、キャリア30年を超すベテランアナウンサー。「むーやん」「ともちゃん」「武川さん」いくつもの愛称で親しまれている。私事で恐縮だが、2011年に早期退職制度で、いったん記者職を離れ、ラジオにどっぷり浸る日々だった。
受験生の頃は「ヤンリク」「ヤンタン」「バチョン」「ズバリク」など、関西各局の深夜ラジオを聞きまくっていたが、11年当時、53歳のわたしが聞き始めたのは、朝・昼のAM放送だった。片っ端から聞きまくると、好きな番組、出演者が固まってきた。
その中で強烈な光を放っていたのが武川アナだった。番組での共演者、コンちゃん(近藤光史)、メッセンジャー(黒田、あいはら)、テンダラー(浜本、白川)らとのトークのやりとりは、アシスタントと呼べるような無難で生やさしいものではなく、主張すべきはしっかり主張。時にはけんか腰になって生放送でも声を張り上げた。といって、リスナーからは愛されるキャラクター。
前述のコンちゃん、メッセンジャー、テンダラーはいずれも海千山千の百戦錬磨。番組を盛り上げるためのトークではあるが、興奮して口角泡を飛ばす姿が想像できる、本音丸出しラジオだった。
番組中、テンダラーが「たまにはランチ行きましょうよ」と武川アナを誘うと「なんで私が行かなきゃならないの?」と反発。「ええやないですか。仲良くしましょうよ」と話すテンダラーの方が大人に映るが、武川アナは聞き入れず。その場しのぎの軽いコメントで、お茶を濁すことをしないのだ。
社歴では20年以上先輩にあたるコンちゃんにも遠慮なし。奔放なトークに「武川! お前なあ!」と声をあげるシーンは、リスナーのお楽しみになった。
武川アナは山梨県出身。高校生の頃は「僕と付き合ってください!」と告白する男子生徒が長い行列を作ったという伝説を持つ(本人談)。
MBS入社2年目から、テレビの「明石家電視台」のアシスタントを務め、12年間にわたって明石家さんまと共演した。ただ、当時はそんなに目立たない存在だった(私の主観)。
結婚、出産を経て、40代になってから武川アナの魅力は一気に開花した。それもラジオという世界で。コンちゃんに代表される「大阪のうるさ方」とも堂々と立ち向かい、時にはずばずば切り込んでいった。
こんなアナウンサー、見たことない。ラジオを毎日聞くようになって、いくつもの番組をハシゴしてみたが、大阪局のアナウンサーでトップを張れるのは「この人しかいない」と確信した。東京のテレビを見ると、モデルさんかアイドルかと見まがう美女ばかり。対して「むーやん」は今年56歳の熟女アナウンサー。趣味はキックボクシング。「定年まで勤めるのか」「フリーに転身か」と一部では注目を集めている。
23年2月には自宅で足を滑らせ、転倒し肋骨(ろっこつ)骨折。同年12月にも撮影でスケートしていて転倒し、左手を骨折した。口は達者だが、足元の年齢は隠せない。けがに注意しながら、長くその声を聞かせてほしいものだ。【三宅敏】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)




