流ちょうなフランス語、三枚目的な要素が混じったキャラクター…。63歳になったジョディ・フォスターがミステリー作品で円熟の魅力を発揮している。
「プライベート・ケース」(24日公開)の舞台はパリ。精神分析医のリリアン(フォスター)は、長年診てきた患者ポーラの急死を知らされる。自殺の兆候がまったくなかっただけに、薬物の過剰摂取が死因と聞いたリリアンは「殺人」を疑う。
妻の死の責任は主治医リリアンにある、といきり立つポーラの夫。意味深な目で見つめてくる娘。そして、ポーラが亡くなったばかりの伯母から莫大(ばくだい)な遺産を相続していたことが明らかになる。
守秘義務から、ポーラから聞いた話を警察に話せないリリアンは、持ち前の心理分析力を武器に真相究明に動き始める。
名のある精神分析医のリリアンが、怪しげな催眠療法士を訪ねて、ポーラにまつわる自らの記憶をたどったり、元夫の眼科医(ダニエル・オートゥイユ)をにわかバディに探偵もどきの捜査に挑んだり。エリート医師の不器用な側面や危なっかしさ-フォスターの演技に説得力がある。三枚目ぶりがチャーミングだ。
仏名優オートゥイユとのやりとりも見どころで、リマリッジ・コメディー(再婚喜劇)としても楽しめる。
「フランス人監督による全編フランス語のフランス映画に出ることが長年の夢だった」というフォスターは、流ちょうなフランス語を披露するだけでなく、アメリカ出身の医師という設定に合わせ、フランス人特有の言葉遣いや俗語に「?」を示しながら、独特の仏文化をさりげなく解説する役割も果たしている。
メガホンを取ったレベッカ・ズロトヴスキ監督は「フランス映画界のソフィア・コッポラ」と称されているそうだ。年齢を重ねたフォスターの厚みや深さを魅力的に捉え、ハイセンスで生活感のあるリリアンの衣装は、監督自身のワードローブから調達したそうだ。
リリアンの住むマンションのらせん階段が。内心の迷宮の象徴として効いている。【相原斎】




