1970年の大阪万博のシンボルと言えば、「芸術は爆発だ!」の故岡本太郎さんが作った「太陽の塔」が有名です。開幕まで約2カ月となった2025大阪・関西万博のシンボル「大屋根(リング)」とともに注目を集めそうな「シンボルツリー」があります。
先日、万博で事業プロデューサーを務める映画監督の河瀬直美氏(55)が大阪市内で自らが手がけるシグネチャーパビリオン「Dialoge Theater-いのちのあかし-」の概要発表会見に出席しました。
「河瀬館」は「万博184日間、毎日が人類史上、初めての対話」がコンセプトに初めて会う2人が一期一会の対話を繰り広げ、その様子を来場者が映画のように鑑賞するパビリオンです。
「対話」を通じて「分断」の解決策に迫る体験型のパビリオンは廃校となった木造校舎を再利用します。奈良・十津川村の旧折立中学校、京都・福知山市の旧細見小学校中出分校の木造校舎計3棟を大阪・関西万博の会場である大阪・夢洲(ゆめしま)に移築。5年前から議論を重ねてきたという河瀬氏は木造校舎について「いまはこの世にいない息吹が刻まれているような…。役割を終え、廃校になった校舎たちには、確かにあった記憶が刻まれていると感じています」。校舎に使われていた部材1枚1枚を丁寧に分解し、再構築しています。
パビリオンは、「エントランス棟(ホワイエ)」「対話シアター棟」「森の集会所」「記憶の庭」で構成され、森の中にたたずむイメージです。
体験受付を行う前に参加者が心を落ち着ける場所が「記憶の庭」です。
この庭にシンボルツリーとして、推定樹齢100年のイチョウの木が移植されました。
「イチョウの木は切られる運命だった。みんなもあきらめていた」
福知山・細見小学校中出分校の校舎前にあったイチョウは、子どもたちを見守り、校舎に寄り添うように育ってきました。伐採の危機のイチョウを移植するため全国各地から精鋭の庭師たちが集まりました。
「高さは新幹線一両分はあり、夢洲に運ぶのは大プロジェクト。ン千万というお金で、この1つの命をシンボルツリーとして私たちのパビリオンの真ん中に据えました」と河瀬氏。
河瀬館では、チャイムが鳴ると、来場者は150席のシアターに着席します。ホワイエで選ばれた来場者と、スクリーン上の対話者が、筋書きのない「対話」を繰り広げます。対話が終わると、河瀬氏ら世界各国の映画監督が製作したエンディングムービーが流れます。
シナリオのない「対話」について河瀬氏は「どんな内容になるか、私も分からない。会期中、1600ほどの対話が繰り広げられるが、もしかしたら、なにこれ、神回やん! むちゃむちゃおもろいやんというのもあるかもしれない。何やったん…もあるかもしれない」と説明した。
開幕まで約2カ月。万博のチケットの売れ行きが低迷していますが、河瀬氏は「最初の4月の段階で、なんか、河瀬館でえらいことが起こってるでと思ってもらって『予約がとれないわ~』となることを目指したい」と意気込みます。
巨大なイチョウが「神回」を見守ります。
【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)




