東日本大震災からまもなく14年。東日本大震災では支援物資を何台ものトラックで運んだ俳優杉良太郎(80)は大阪市内で行われたアニメ映画「親鸞 人生の目的」(青山弘監督)公開記念舞台あいさつと、その後の取材会で、被災地へ思いを語りました。

「震災や津波で亡くなった人たちは、年月が経てば忘れる? 忘れないよ」

被災地では多くの苦しみの声を聞いてきました。夫を亡くした女性は「杉さん、神様に助けてって言ったけど、神様は助けてくれなかった」と打ち明けました。夫婦で手をつないで「絶対に手を離してはいけないよ」と避難途中に流木が流れてきて、心配になり、見ている間に手が離れてしまい、夫が海に流されたといいます。

神様がいるのか、いないのか? 杉は杉節でこう話します。「だいぶ、神様と勝負したことがある。1回や2回じゃない。朝までかかって、神様、出てこい!」

被災地に入った後、「神様と勝負した」ことは数え切れないそうです。「この世に神様はいるのか。なんで助けてあげなかったのか。なんで、なんで…」。

「親鸞」の劇中に「人は苦しくともなぜ生きるのか?」という問いがあります。苦の原因は「煩悩」にあるとも説かれています。

人間は煩悩を捨てることができるか?

「捨てることができるわけがない。煩悩を捨てることができたら神様やな。ダメだよということに魅力がある。ダメと言われたら、そっちのほうに走っていくのが人間や。人生、長いこと生きてきた。それが人間やねん。それで、ええやん」

15歳で始めた刑務所や高齢者施設の慰問に始まり、阪神・淡路大震災、東日本大震災の被災地支援、ベトナムの児童養護施設の子を「里子」として支援するなど、65年にわたり福祉活動に取り組んできました。

死生観について杉はこう語ります。

「死んだらどこに行くって悩まなくてもええ。そんなこと考える暇あるか。生きている間に考えんと。生きている間に1つでも幸せを積み重ねて、楽しい思い出を作っていかな」

800年前に生きた親鸞ですが、「恐れ多いけど」と前置きし、「よう似てるなと。親鸞聖人は後生の一大事と、苦しいのになんで人間は生きているのかと悩み続けた」。劇中では、親鸞が木に頭をぶつけているシーンがある。

「私もホテルで何でおまえは芝居がヘタなんだと壁に頭をぶつけて、おまえなんか死ねって、そんな経験がある。血だらけになって翌日にその場で寝ていたということもある」

これまで、苦しい人、つらい人にたくさん会ってきました。「なんでやろ、なんで助けてあげることができなかったんやろ、そんなこと考えていると夢にも出てくる」。

80歳。覚悟を持って、走り続ける杉は言います。

「神様はいると思う。でも、ただ見ているだけ。おまえ、死ぬまでがんばれと」

【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)