就任3年目に入った宙組トップ真風涼帆(まかぜ・すずほ)が、男役“熟成”の味を発揮している。兵庫・宝塚大劇場で「エル ハポン-イスパニアのサムライ-」「アクアヴィーテ!!」を上演中。芝居では、江戸初期にスペインに渡った仙台藩士に「男」の深みをにじませ、ウイスキーをテーマにしたショーでは華やかな立ち姿でファンを魅了している。宝塚公演は15日まで。東京宝塚劇場は来年1月3日~2月16日。

トップ3年目に入った真風涼帆(撮影・宮崎幸一)
トップ3年目に入った真風涼帆(撮影・宮崎幸一)

芝居で参考にした世界観は、西部劇。演出の大野拓史氏から「マカロニ・ウエスタンの世界に近い」と言われ「男」を極めている。「実際、スペインには『ハポン』姓がある。日本人が残ったんだ-みたいな感じの、ロマンを」。舞台は江戸初期。真風は使節団としてスペインに渡った仙台藩士・蒲田治道を演じる。立ち回りも多い。

「立ち回りとか、武士道じゃないですけど、しみ付いている(日本人の)感覚はあります。(その中で)男らしいウエスタンの主人公じゃないですけど『多くを語らずして』のような」

昨秋「白鷺(しらさぎ)の城」で日本物レビューは経験したが「和物のお芝居じたい、初めてなんです」と明かす。

「前回の『オーシャンズ11』は快活なエネルギーを放つ感覚。今回はまた、ためこんで(エネルギーを)出す。帯を締めるような感覚をグッと感じます」

宙組を率いて11月で丸2年が過ぎた。ショーのテーマは「ウイスキー」。真風ならではの“熟成”された味を表現する。「お酒がテーマなので、大人っぽくかっこいいプロローグ、タンゴ、ラテンのシーンも」。

星組にいた若手時代からスタイリッシュなスターとして注目されていた。ウイスキーのイメージを聞くと「渋い、味わいの深いイメージがある」と答えた。

「(今作を機にウイスキーの)種類を見せていただいたら、こんなにたくさんあるんだ、って! 詳しいところまでは全然知らなかったので。歌詞で言う場面もあり、またみんなで飲みたいな、とは思います」

宙組では前作で中堅が多く退団し、若手にもチャンスが増えた。真風体制の“深み”も増すばかりだ。

「お芝居、ショーでも、みなに課せられるものが変わり、頑張っている姿を見ると、とても力強く感じます。そうやって受け継がれていくものなんだなとも」

星組時代、当時トップの柚希礼音をともに支えた先輩の紅ゆずるが10月で退団。「(トップが共演する)タカラヅカスペシャルだと(実感して)寂しさもこみ上げてくるかな」と言う。

トップの重責、重み。バトンを渡され、渡し、劇団は105年の伝統、歴史を重ねてきた。「重み…そうですね。私はちょうど、宙組20年(の就任)で。式典などがあり、先輩方の重みをすごく深く、ありがたく感じられた」と振り返る。

今作は今年最後の本拠地作で、来年の東京宝塚劇場幕開け作でもある。

「今年、終わっちゃいますね。信じられない。あっという間でもあり、今年の初めはもう『何年も前』だったような重厚感も。それだけ、1作1作が充実し、密度が濃かったのかな」

星組、花組には新トップが誕生した。「時代の流れ…。来年は、オリンピックもあり、日本全体が活気立つ。宝塚も、宙組も、負けないように勢いをつけて。瞬間、瞬間を大切に、次へつなげたい」。涼しげなルックスに熱い魂を秘め、2020年も宙組をけん引する。【村上久美子】

◆宝塚ミュージカル・ロマン「エル ハポン-イスパニアのサムライ-」(作・演出=大野拓史) スペイン南部の町コリア・デル・リオに「サムライの末裔(まつえい)」と語る「ハポン(日本)」姓の人がいる。現地に残る「サムライ伝説」が物語の軸。慶長遣欧使節団として派遣された仙台藩士を主人公に心情や異文化との出合いを描く。

◆ショー・トゥー・クール「アクアヴィーテ!!~生命の水~」(作・演出=藤井大介) 香り高く、味わい深い「ウイスキー」をテーマに構成したショー。

☆真風涼帆(まかぜ・すずほ)7月18日、熊本県生まれ。06年入団。星組配属。新人公演主演5回。15年5月に宙組へ移り、17年11月にトップ就任。昨年3月、人気漫画が原作の「天は赤い河のほとり」で本拠地お披露目。前本拠地作「オーシャンズ11」で、11年新人公演でも主演したダニーを好演。身長175センチ。愛称「ゆりか」「すずほ」。